20220120133622『ちきり伊勢屋』
今日は人情噺の大作「ちきり伊勢屋」です。まあ冬の噺としても良いのではないでしょうか。
上方では「白井左近」と言います。

『原話』
1774年の「寿々葉羅井」の「人相見」や1814年の根岸鎮衛の随筆「耳袋」の「相学奇談の事」あたりだと言われています。
 古くは二代目小さん師や談洲楼燕枝師などが得意としました。
また代々小さん一門に受け継がれています。

『演者』
最近では六代目圓生師でしょうね。
個人的には十代目入船亭扇橋師で寄席のトリの時に聴きました。

『ストーリー』
ちきり伊勢屋という質屋の若主人伝次郎が麹町で易の名人白井左近に人相を見てもらうと
「あなたは来年2月15日に死ぬ」
 と言われます。
 先代が酷いことをしたのでその祟りだと言います。伝次郎は番頭の籐兵衛と相談し
「これからは出来るだけ人に施しをして自分も名残が無いように遊び尽くす」
 と言います。
 2月15日の前日はお通夜と称して大騒ぎをします。翌日は葬式の準備をしますが死ねません。
 結局、店は人手に渡りとぼとぼと高輪までやって来ると、易の白井左近と出会います。左近は死相を知らせたので江戸所払いになっていたのです。不思議に思った左近がもう一度見ると、人助けをしたので死相が消えて80歳以上長生きする相が出ていると言われます。
 伝次郎は幼馴染の伊之助と駕籠かきをはじめます。ある日、昔贔屓にしていた幇間の一八を乗せたので以前作ってやった羽織と着物を借りて質屋に持って行きます。
 そこの内儀と娘は火事で店を焼き親子四人で心中の相談をしているところを伝次郎に三百両恵まれて助けられた者でした。
 伝次郎はそこの婿となりちきり伊勢屋を再興します。

『能書』
圓生師は「長い噺ですがお葬式のところまで来れば楽です」と語っていました。

『ネタ』
「ちきり」は質屋や両替商の屋号に使われることが多く、数字の五を図案化したマークで示されるそうです。
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「蛇足」
四代目柳家小さん師の演出では、白井左近は紀州藩に仕えていた学者で、主君への諫言がもとで浪人となり、生活のために占者をしていたら不思議と当たるようになったというものでした。