20220116101612『初音の鼓』
 今日はこの噺です。取り上げるのは初めてかも知れません。季節的には関係ない感じですが、1月中に取り上げたい噺でもあります

『原話』
芝居の「義経千本桜」が下敷きになってる「継信」が「初音の鼓」の題で演じられていて
1807年の喜久亭壽暁のネタ帳「滑稽集」にも「ただのぶ」と記されています。しかし「義経千本桜」の知識がないと理解出来ないので「ぽんこん」という言い方が一般化したそうです。

『演者』
八代目林家正蔵師や色々な噺家さんが演じています。今でも寄席で演じられています。

『ストーリー』
 怪しげな骨董品を集めて悦に浸っている殿様の所に、古道具屋の金兵衛が「初音の鼓」なる怪しげな鼓を持ってきます。
「これを打つとそこに居る者がコンと鳴きます」
 というので殿様が打つと金兵衛が
「コン」
 と鳴きます。殿様は気に入り百両で買うことになります。
 金兵衛は三太夫に
「殿様がポンとおやりになって、あなたがコンと鳴いたら一両」
 と持ちかけます。
 殿様がポンポンポンと打つと三太夫は三両となると思い
「コンコンコン」
 と鳴きます。殿様は金兵衛に
「今度はそちがこの鼓調べてみせい」
 と言って金兵衛に打たせます。すると殿様が
「コン」
 と鳴きます。殿様は
「確かに『初音の鼓』に相違ない金子を取らす」
 と言って買い上げることになります。しかし貰った金子を見ると中身が少ないのです。それを見た殿様
「中身が少ないと申すか。心配するな、三太夫が鳴いたのと今、身が鳴いた分を差っ引いてある」

『能書』
昔から「初音」という目出度い言葉が登場するので新春あたりに盛んに演じられていたそうです。

『ネタ』
八代目正蔵師は「継信」と呼ばれる方の「初音の鼓」もやったそうです。こちらは殿様が鼓を打つと縁の下から百姓がびっくりして飛び出し、
「そのほうは?」
「夫(ぶ)に参った者で」
「何の夫だ?」
「ただの夫で」
「忠信? なら壇ノ浦の合戦の噺をいたせ」
「存じません」
「そちが知らなければ誰に訊くのじゃ」
「次の夫(継信)にお訊きなさい」
 と下げるそうです。

「蛇足」
鼓は太鼓の変形だそうですが、肩に乗せて打つのようになったのは能が登場してからだそうです。