79184e65寿限無』
 今日はこれです。

『原話』
無住法師の著書『沙石集』を始め、狂言や民間伝承、信州の子守唄など全国各地に類話が見られるそうです。

『演者』
前座噺ですのでほぼ全ての噺家さんがやるか、かってやったと思われます。

『ストーリー』
めでたく玉のような男の子が産まれたというので、親御さんは犬応び。
なんとかわが子にめでたい名前をつけたい一心から、亭主は知恵者の寺の和尚に名づけ親になってもらおうと相談に出かけることにした。
「なにかこう、長生きができそうで、一生食いっぱぐれのないような名前をお頼み申します」
 等と調子の良い頼みをします。色々考えたのですが、どれもイマイチでしてピンと来ません。そこで和尚は、 
「そうじゃ、今思い出したが、『無期限の寿命』を衣す言葉がお経の中にある。それを含んだ言葉として『寿限無』というのはどうじゃな?」
「へえ、そりゃ長生きしそうだな......、和尚さんそういうのほかに何かありませんかねえ?」
「まだいくらでもある。『五劫の摺りりれ』というのはどうじゃ?一劫は三1年に一度天人が天降って、下界の大岩を衣で撫でる。その岩が摺り切れてしまうまでの時間を一劫という。瓦劫はその瓦倍だから、ほとんど永遠と同じ意味になるな」
「なるほど......いゃ、さすがですねえ和尚さん、で、ほかには何かありませんか?」
 亭主は、和尚さんに縁起がよくて長生きをしそうな言葉を次つぎに聞き出し挙句、
「この辺でなんとか手をうちやしよう。じゃ、そいつを全部紙に書いてください。家に帰ってかかあに見せて相談しますから......」
 家に帰ってかみさんに相談するも、なかなか話がまとまらない。そこで亭主は、
「ええぃ、少しぐらい長えからって捨てちまうのは勿体ねえや」
 ということで、ついた名前が・・・
 寿限無寿限無、五劫の摺り切れ、海砂利水魚の水行末、雲来末風来末、食う寝る所に住む所、ヤブラコウジのブラコウジ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助
と言う長い名前。
 やがて、名前のせいなのか、子供はすくすくと育ちまして、ある日の事。学校へ行くのにもいちいち名前を呼ぶのでもう大変!何時までも、何時までも時間が掛かるので、学校は夏休みになっちゃった。

【注目点】
この他にも色々なパターンがあります。
よく有るのは喧嘩してタンコブをこさえてきた友達が言いつけに来ると、名前が長いので、
タンコブが引っ込んでしまうと言うもの。これが一般的ですね。
ブラックなのもありまして、寿限無が川に落ちてしまい、友達が家に家族の助けを呼びに来るのですが、名前が長いので、溺れて死んじゃった。というものです。
これはさすがにマズイのか滅多にお目に掛かれませんね。
目出度い噺なのに、お祝いの席で出来なくなりますね。

『能書』
技術的には、子供とおかみさん、父親でそれぞれ言い立てのテンポが違いますので、
そこを気を付けないとイケませんね。

『ネタ』
初代の三語楼師はコブを拵えた子供の家に夫婦で謝りに行って「ウチの寿限無……」と繰返して「かかあ水を一杯くれ」と落としていたそうです。
このやり方は私は高座では聴いたことがないですね。誰かやっているのでしょうか?