MM_1872 え〜この前まで汗を掻いていたと思ったら、もう寒さを感じるようになりました。もうすぐ鍋の季節ですね。鍋といえば色々とありますがやはり「おでん」が一番筆頭に挙げられるのではないでしょうか?
 ということで今日は柳家小ゑん師匠の新作落語「ぐつぐつ」を偏見と独断で考えてみたいと思います。

個人的は好きな噺でもあります。ご存知ない方のためにストーリーの一部を紹介します。

 オリオン座も明るいある冬の夜、緑色の三両編成の目蒲線がホームに入ってきます。
 人々は足早に階段を降り、ひとつしかない改札を出ると左右に分かれていきます。
 十年一日のごとくセルロイドの桜が満開の商店街。西小山銀座通りから横丁に入ると、左右に冷たい自動販売機の光がポツンポツン。
 魚屋さんのシャッターの前に屋台の明かりが見えます。残業帰りのOLと言葉を交わし、忙しく働くおやじ。その目の前の銅壺の中で煮立っているおでんたちの声に耳をそばだててみてください。(ぐつぐつぐつ……)
「おい、こんにゃく、もう少し向こう行けよ」。
「はんぺんちゃんはいいねえ、色が白くて肌はつるつるで」
「絡んでくるなよ、糸こんにゃく」
「ゲソまきが蛸の足を踏んだ」(ぐつぐつぐつ……)
 という展開で噺は進んで行きます。落ちはあえて書きませんが衝撃のラストです。
主人公はイカ巻で、おでんの鍋の常連である色々な具が個性豊かに登場します。このあたりの師匠の演技も見もの聴きものです。

 この舞台となった武蔵小山は小ゑん師匠の生まれ育った街です。(小ゑん師匠は西小山駅前の商店街の電器屋さんの生まれです。ちなみに兄弟弟子の柳家小袁治師は秋葉原の電気屋さんの生まれです。電気屋のせがれは落語家を目指すのか?)
 だから情景描写が優れています。聴きてもすんなり噺に入って行きます。おでんの鍋は人間社会園ものでです。イカ巻さんはその中でも疲れた中年サラリーマンといったところでしょうか?
 そんな比較をするとイカ巻さんに感情移入してしまいます。彼が早く売れないかと噺を聴いていますが、同時に売れてしまっては噺が終わってしまうという矛盾も抱えています。同時に彼の身に何かとんでもない不幸が訪れますようにと祈りながら聴いてる自分の存在に気が付きます。
「ああ俺って残酷な一面もあったんだな」
 そんな事を自覚させてくれる噺でもあります。
 
 この噺、師匠は苦し紛れに2時間で書いたそうですが、よく出来ていると思います。また聴いてる自分の精神状態によっては全く違う感想を持つのも素晴らしいところです。
 皆様も是非聴いてみてください!