86286f9d『幇間腹』
この噺が秋の噺かと問われれば少し心もとないのですが、それでも取り上げたいと思います。

【原話】
原話は、安永9年(1780年)年に出版された笑話本『初登』の一編である「針医」と言われていますが、それより早く落語に近いのが1776年(安永5年)の「年忘噺角力」のなかにある「針のけいこ」です。
元々は上方落語の演目で、主な演者には2代目柳家小さんや5代目古今亭志ん生師等がいます。
そのせいか古今亭一門と柳家一門の噺家さんが多く掛ける様です。

【ストーリー】
あらゆる遊びをやりつくした若旦那が思いつた究極の遊びがなんと針治療の遊び!
さて、相手がいない・・・どうしよう、猫や壁、枕じゃ物足りない、人にやってみたいなあ〜と考え
思いついたのが、幇間の一八。
思いつかれた方はたまりません。一旦は断るのですが、針一本につき祝儀を弾むと言う。
おまけに羽織もこさえてくれると言う条件にしぶしぶ了解しますが、これが大変な事になってしまいます。下げは秀逸だと思います。

【演者】
先程も書いた通り古今亭一門を始め広く演じられています。三代目春風亭柳好師の十八番でもありました。

【注目点】
この針を打つシーンをやりすぎるとお客が引いてしまうので、加減が難しいそうです。

『ネタ』
その昔黒門町がこの演目を取り入れ様として、甚五郎を名乗っていた志ん生師に黒門町が稽古を頼んだそうです。志ん生師は黒門町の家まで来てくれて随分稽古したそうですが、なかなかモノにならないのでついに諦めたとか。
 今になってみると黒門町の「幇間腹」聴いてみたかったですね。

『能書』
鍼は、鍼医術の一派で、天和2(1682)年、盲人の杉山和一が幕命を受け、鍼治講習所を設置したのが始まりで、江戸をはじめ全国に爆発的に普及しました。
それ以来鍼医は盲人のものとされました。