index『厩火事』
今日はこの噺です。噺の中にトウモロコシが出て来るので夏の噺としましたが、その後調べてみると秋の噺と判りましたので、改めて掲載したいと思います。
題名はネタになっている孔子の故事からです。

【原話】
1807年の喜久亭壽暁のネタ帳「滑稽集」に「唐の家事」とありこれが元です。
生粋の江戸落語です。

【ストーリー】
髪結いで生計を立てているお崎の亭主は文字通り「髪結いの亭主」で、怠け者。昼間から遊び酒ばかり呑んでいる年下の亭主とは口喧嘩が絶えません。
 しかし本当に愛想が尽き果てたわけではなく、亭主の心持ちが分からないと仲人のところに相談にやって来ます。
 話を聞いた仲人兄はその昔、孔子が弟子の不手際で秘蔵の白馬を火災で失ったが、そのことを咎めず弟子たちの体を心配し弟子たちの信奉を得たと話と、瀬戸物を大事にするあまり家庭が壊れた麹町の猿(武家)の話しをします。
 そして目の前で夫の大事な瀬戸物を割り、どのように言うかで身の振り方を考えたらどうかとアドバイスをします。帰った彼女は早速実施。
 結果夫は彼女の方を心配します。感動したお崎が「そんなにあたしのことが大事かい?」と質問すると、
「当たり前だ、お前が怪我したら明日から遊んで酒が呑めねえ」


【演者】
三代目小さん師、そして何と言っても八代目文楽師、そして志ん生師などが有名です。
現役では小三治師でしょうか。

【注目点】
やはりお崎さんを可愛く演じられるかでしょうね。
このお崎さん、可愛い女性ですねえ。こんな女房なら”髪結いの亭主”になってみたいですね。

『能書』
文楽師匠の演出を「ちょっと説教クサイ」と言う評論家のかたもいますが、
仲人は本気で心配しているので、あれぐらいで良いと私は思います。本来仲人は夫婦の間に色々な揉め事が起きると間に入って仲裁する役目もあります。
 この噺で気をつけなくてはならないのは、亭主が体を心配するシーンで、お涙ちょうだいのあざとい演出にしている噺家さんがいる事ですね。ここをクサクすると、サゲのからっとした笑いが消えると私は思うのですが・・・如何でしょう?

しかし、この後もこの二人は何とかやって行くんでしょうね。(^^)

『ネタ』
女髪結ですが、寛政の始めの頃に、
日本橋三光新道(桃川のあれです)の下駄屋お政さんが、臨時として頼まれ始めたのが最初と言われています。
後年の文化年間から急速に普及しましたが、風紀が乱れると言われ、天保の改革の頃まで幾度か禁制となったそうです。