1103-1今日は「黄金の大黒」です。

明治末から昭和初期にかけて、初代春団治師の十八番だった上方落語を、金語楼師が東京に持ってきて、
脚色しました。
今でもよく演じられる噺ですが、残された音源は少ない様です。

長屋の一同に大家から呼び出しが掛かりました。
普段から店賃なんぞは爺さんの代に払ったきりだとか、
店賃? まだもらってねえ、などどいう輩ばかりなので、
てっきり滞納で店立ての通告と思い込みます。

ところが、聞いてみると、子供たちが普請場で砂遊びをしていた時、
大家のせがれが黄金の大黒さまを掘り出したという。
お目出度い事なので、長屋中祝ってお迎えしなければならないから、皆一張羅を着てきてくれと大家の伝言。

ご馳走になるのはいいが、一同、羽織なぞ持っていません。
中には、羽織の存在さえ知らなかった奴もいて、もう大変。

やっと一人が持っていたはいいが、裏に新聞紙、右袖は古着屋、左袖は火事場からかっぱらってきたという大変な代物です。
それでも、無いよりはマシなので、、交代で着て、変な祝いの口上を言いに行きます。

そして、待ちに待ったごちそう。
鯛焼きでなく本物の鯛が出て寿司が出て、普段からそんなものは目にしたこともない連中だから、
さもしい根性そのままに、ごちそうのせり売りを始める奴がいると思えば、
寿司をわざと落として、
「落ちたのはきたねえからあっしが」と六回もそれをやっているのもいる始末。
そのうち、お陽気にカッポレを踊るなど、呑や歌えのドンチャン騒ぎ。

ところが、床の間の大黒さまが、俵を担いだままこっそり表に出ようとするので、
見つけた大家が、
「もし、大黒さま、あんまり騒々しいから、あなたどっかへ逃げだすんですか」
「なに、あんまり楽しいから、仲間を呼んでくるんだ」

大黒様は、もとは大黒天と言い、インドの戦いの神で、シヴァ神の化身であるマハーカーラと言い、
頭が三つあり、怒りの表情をして、剣先に獲物を刺し通している、恐ろしい姿で描かれていました。

ところが、軍神として仏法を守護するところから、五穀豊穣をつかさどるとされ、のちには台所の守護神に転進したという訳です。

江戸時代には、大黒舞いといい、正月に大黒天の姿をまねて、打ち出の小槌の代わりに三味線を手に持ち、
門口に立って歌、舞いから物まね、道化芝居まで演じる芸人が居たそうです。

この噺を聴いて今ではこのような大家さんはいないでしょうね。落語の世界ならではですね(^^)続きを読む