『猫久』
今日は久しぶりにこの噺です。
『原話』
原話は不詳で、幕末の嘉永年間ごろから口演されてきた、古い江戸落語で、明治中期の二代目小さん師が完成させた噺で、それ以来代々小さん師が工夫を重ね現代まで伝わってきました。
『演者』
やはり柳家の噺家さんで口演されているようです。
『ストーリー』
長屋の熊さんの向かいに住んでいる久六は、いつもおとなしく、猫の久六と呼ばれています。その猫久が、ある日、血相を変えて家に帰ってきて、刀を出せと女房に言いつける、あわてて止めると思いの外、女房は刀を三度押し戴いてから亭主に渡し、猫久は駆けだして行来ます。
向かいで一部始終を見ていた熊さんは、床屋に行って、大声で親方にその話しをします。
それを、たまたま奥で聞いていた侍が、それは天晴れ、女の鑑であると感心して、
「よおっく承れ。日ごろ猫とあだ名されるほど人柄のよい男が、血相を変えてわが家に立ち寄り、剣を出せとはよくよく逃れざる場合。また日ごろ妻なる者は夫の心中をよくはかり、これを神前に三ベンいただいてつかわしたるは、先方にけがのなきよう、夫にけがのなきよう神に祈り夫を思う心底。見共にも二十五になるせがれがあるが、ゆくゆくはさような女をめとらしてやりたい。後世おそるべし。貞女なり孝女なり烈女なり賢女なり、あっぱれあっぱれ」
と言われますが、熊さんにはその実よく分かりません。いただく方が本物なんだと感心して、家に帰ります。
すると、かみさんが、イワシイワシとがなり立てるので、さっきの侍の真似をしてやろうと思います。
「オレが何か持ってこいって言ったら、てめえなんざ、いただいて持ってこれめえ」
「そんなこと、わけないよ」
等と言い合っているうち、イワシを本物の猫がくわえていってしまいます。
「ちくしょう、おっかあ、そのその摺粉木でいいから、早く持って来いッ。張り倒してやるから」
「待っといでよう。今あたしゃいただいてるところだ」
【注目点】
この噺のキモは途中で出て来る侍です。
侍の怖さを感じさせないと、この噺は面白くありません。
侍が怖いので熊さんは何だか良く判らないのに、納得したフリをしてしまうのです。
武士と町人は、身分が違ったので、普通は身分が違うから、もとよりふつうに話ができるものではないのですが、江戸時代とはそう云う世界だったという事ですね。
『能書』
実は二尺以下なら町人でも護身用に刀を持つことが出来ました。
『ネタ』
江戸の家庭では実は、魚を卸すのは亭主の役割だったとか。しかも長屋の戸口にまで色々な物売りが来るのでほとんどの女将さんはその出来合いのおかずを買って済ませていたそうです。
今日は久しぶりにこの噺です。
『原話』
原話は不詳で、幕末の嘉永年間ごろから口演されてきた、古い江戸落語で、明治中期の二代目小さん師が完成させた噺で、それ以来代々小さん師が工夫を重ね現代まで伝わってきました。
『演者』
やはり柳家の噺家さんで口演されているようです。
『ストーリー』
長屋の熊さんの向かいに住んでいる久六は、いつもおとなしく、猫の久六と呼ばれています。その猫久が、ある日、血相を変えて家に帰ってきて、刀を出せと女房に言いつける、あわてて止めると思いの外、女房は刀を三度押し戴いてから亭主に渡し、猫久は駆けだして行来ます。
向かいで一部始終を見ていた熊さんは、床屋に行って、大声で親方にその話しをします。
それを、たまたま奥で聞いていた侍が、それは天晴れ、女の鑑であると感心して、
「よおっく承れ。日ごろ猫とあだ名されるほど人柄のよい男が、血相を変えてわが家に立ち寄り、剣を出せとはよくよく逃れざる場合。また日ごろ妻なる者は夫の心中をよくはかり、これを神前に三ベンいただいてつかわしたるは、先方にけがのなきよう、夫にけがのなきよう神に祈り夫を思う心底。見共にも二十五になるせがれがあるが、ゆくゆくはさような女をめとらしてやりたい。後世おそるべし。貞女なり孝女なり烈女なり賢女なり、あっぱれあっぱれ」
と言われますが、熊さんにはその実よく分かりません。いただく方が本物なんだと感心して、家に帰ります。
すると、かみさんが、イワシイワシとがなり立てるので、さっきの侍の真似をしてやろうと思います。
「オレが何か持ってこいって言ったら、てめえなんざ、いただいて持ってこれめえ」
「そんなこと、わけないよ」
等と言い合っているうち、イワシを本物の猫がくわえていってしまいます。
「ちくしょう、おっかあ、そのその摺粉木でいいから、早く持って来いッ。張り倒してやるから」
「待っといでよう。今あたしゃいただいてるところだ」
【注目点】
この噺のキモは途中で出て来る侍です。
侍の怖さを感じさせないと、この噺は面白くありません。
侍が怖いので熊さんは何だか良く判らないのに、納得したフリをしてしまうのです。
武士と町人は、身分が違ったので、普通は身分が違うから、もとよりふつうに話ができるものではないのですが、江戸時代とはそう云う世界だったという事ですね。
『能書』
実は二尺以下なら町人でも護身用に刀を持つことが出来ました。
『ネタ』
江戸の家庭では実は、魚を卸すのは亭主の役割だったとか。しかも長屋の戸口にまで色々な物売りが来るのでほとんどの女将さんはその出来合いのおかずを買って済ませていたそうです。