はじめのブログ

落語好きの中年オヤジが書いてる落語日記

林家正蔵

「千両みかん」という噺

bb92b71c『千両みかん』
今日は「千両みかん」と言う噺です。夏なので少し早いですがね。このブログでは余り取り上げないので今年は取り上げました。

【原話】
松富久亭松竹の作と言われています。ですので純粋な上方噺です。
東京に入って来たのは戦後だそうです。

【ストーリー】
 大店の若旦那が病に倒れます。聞いてみると「みかんを食べたい」と言う。
大旦那からみかんを探せと命じられた番頭が、江戸中を探しますが、夏にみかんを売っている店はありません。
 ようやく、神田の「万惣」で一個みつけたが、千両だという値。毎年毎年、店の名に掛けて蔵一杯のみかんを保管している中の一個だからそれだけの価値があると。
店に帰って報告すると、「千両で息子の命が買えるなら安い」と言いすぐ千両の金を番頭にもたせます。
大旦那様から千両を預かり、みかん一個を買って若旦那に持って帰ります。
 若旦那は喜んでみかんを食べて元気になり、十袋のうち三袋を残した。番頭を呼んで、おとっつあんとおっかさんに一袋渡して欲しい、苦労を掛けたから番頭さんも一袋食ってくれと、みかん三袋を番頭に渡した。
 番頭は預かったみかんを持って考えた。来年暖簾分けでご祝儀をもらっても、四十両か五十両だが、ここに三百両ある。
考えた挙句、番頭はみかんを持って何処かに・・・・・・

【演者】
八代目正蔵師を始め、志ん生師などが有名です
【注目点】
上方からの輸入ですが、商人が絡んでる噺なので、あちらの方が理論的にしっかりした処があります。
上方では、最初は商人のプライドに掛けて只でも良いと言うのです。
それがこじれて千両になるのですが、そのくだりが自然で納得出来るのですね。
こちらの千両の話も分かりますが、ちょっと苦しいかなぁ〜と。
商人の心意気が強調された上方版と黄表紙などに出てきそうな粋な面を強調した江戸版と言う感じでしょうか。
米朝師匠のを聞いた事がありますが、
天満の青物市場の番頭さんと店の番頭さんの上方商人の意地が
ぶつかり合って、それは良いモノでした。
そう聞いてみると、この噺はやはり上方噺なのだなと思いましたね。

『能書』
志ん生師は神田多町の青物問屋としか言いませんが、
他の師匠ですと、神田の「万惣」に番頭さんが行きます。
わりとあっさりと千両の値が付きます。

『ネタ』
今でも、秋葉原から万世橋を渡り、須田町に入ると
神田方面に向かって左側に「万惣」はあります。
フルーツパーラーになっています。
子供の頃一度入って、パフェを食べた記憶があります。
昔はこの辺は布地屋さんが多かったんですよ。
母親が布地を買いに来た時だったのかな?
時代が違いますが、立花亭もこの辺にありました。

「一眼国」という噺

66e87013『一眼国 』
少し間が空いてしまいました。申し訳ありません。
そこで今日はこの噺です。

【原話】
1842年の「綺談新編」のほか1847年の「噺の種」の「取りに来て取られた」あたりからです。

【ストーリー】
新しいネタを探している見世物小屋の主が、全国を歩いている六部に何か珍しいものを見たことがないかと尋ねる、すると六部が言うのには、
「江戸から北へ百四五十里ほど、広い野原の真ん中の大きな榎木の近くで一つ目小僧を見たことがある」と。
その話を詳しく訊き、低調に礼を言って旅支度、早速行って見ることにします。
北へ北へ行き、主がその場所を訪ねて何とか同じ所かと思う所に行き着きます。
夕刻近くになり、一つ目の女の子を見つけて喜んで、小わきに抱えて捕まえます。
早速、江戸に連れて帰ろうと思ったら、「キャー」と叫ばれた途端に早鐘が鳴り、どこから出て来たのか、周囲を人にとり囲まれて逆に捕まってしまった。
小僧の親や役人と思しき連中を見ると、何とみんな一つ目だった。一つ目の国に迷い込んでしまったのです。
「やや、ご同役、こやつ目が二つあるよ」
「調べはあとじゃ、早速見世物小屋へ出せ」

【演者】
「一眼国」は柳家小さん系の噺で、生粋の江戸落語です。四代目小さん師が得意にしていましたが、この噺を磨き上げた八代目正蔵師は、円朝門下の最後の生き残り、一朝爺さんこと三遊一朝師からの直伝で、小さん師の型も取り入れたと語っています。
他には志ん生師も語っています。

【注目点】
不思議なな噺なので、正蔵師も志ん生師も、笑いをとるため、マクラに江戸時代の両国広小路や浅草奥山のインチキ見世物を面白おかしく説明しています。
六部 と言うのは、巡礼者で、法華経六十六部を写経し、日本全国六十六か所の霊場に各一部ずつを納めたことにその名が由来します。簡単に言うと、全国の国分寺や一宮を巡礼する行者ですね

『能書』
両国界隈には、多くの商人や見世物小屋が林立しており、インチキも多かったそうですね。人の子を食らう鬼娘とか、大ウワバミとか、いい加減なモノも多かったとか。

『ネタ』
一つ目 の伝説は日本ばかりでなく、ギリシア神話のキュクロプスをはじめ、世界各国に伝説があります。
山の神信仰が元といわれ、山神の原型である天目一箇命(あまのまのひとつのみこと)が隻眼隻足とされていたことから、こうした山にすむ妖怪が考えられたとみられます。
「化け物使い」の狸も一つ目に化けていましたね。

サンマ苦いかしょっぱいか?

img2007090800101-sanma今年はサンマが何故か高いのですが、皆さんはもう食べられましたでしょうか?
私は先日、やっと食べました。高かったけど美味しかったです。

そこで今日は「目黒の秋刀魚」です。

と言う屁理屈を付けて、もう9月ですのでこの噺と言う事になります。
かなり古くから語られている噺で、生粋の江戸落語です。大体、武士が出て来る噺は江戸が多いですね。

江戸城に居る上様が不意に野駆に出かけると言い出し、さっさと馬に乗り出かけて仕舞います。
中目黒あたり迄来たのですが、弁当を持ってこなかったので、昼時になると腹が減ってしかたありません。
その時どこからか、魚を焼くいい匂いがします。聞くと秋刀魚と言う魚だと言う。

供は「この魚は下衆庶民の食べる下衆魚、決して上様のお口に合う物ではございません」と言う。
上様は「こんなときにそんなことを言っていられるか」と言い、供にさんまを持ってこさせた。これはサンマを直接炭火に突っ込んで焼かれた「隠亡焼き」と呼ばれるもので、上様の口に入れるようなものであるはずがない。
とはいえ食べてみると非常に美味しく、上様はさんまという魚の存在を初めて知り、かつ大好きになります。

それ以来、寝ても覚めても秋刀魚の事ばかりが頭に浮かびます。
ある日、御三家が揃っている処で、上様は秋刀魚の事を聞きますと、水戸様が「我が領地は秋刀魚の産地です」と答えるのを聴いて、「ではさる重陽の節句の時に皆に馳走してくれ」と頼みます。
当日、城内は秋刀魚の山ばかり、これを焼いたものだから、凄い煙が火事だと思い、火消しが来る始末です。
思い通りに秋刀魚を食べた、上様ですが・・・
「これが水戸の本場か?」と訪ねます。
「はい、御意にございます」
「いや〜秋刀魚は目黒に限る」

この筋は、正蔵師のパターンです。他の噺家さんとは違っています。
普通の筋はhttp://blog.livedoor.jp/isogaihajime/archives/1529208.html#more

目黒に限らず、江戸の郊外は将軍家の御鷹狩の場所でした。
ですので、鷹狩と言うと大げさになるので、お忍びでの野駆けと言うのが本当の処でしょうね。

上様が食べた秋刀魚ですが、江戸時代には目黒は芋の産地で行商が盛んに行われていたそうです。
「目黒のいも」の大需要地が、東海道品川宿と、大きな魚市場が当時存在していた芝であったので、
目黒を朝早く出て両地にて芋を売り、その代金で「芝のサンマ」を買って、昼過ぎに歩いて目黒に帰るのが行商人のパターンの一つだったという事です。
ですから、昼過ぎには間に合ったのですね。

秋刀魚は当時は、保存の為、産地(銚子等)で塩を軽く振り、鮮度の維持に努めました。その後船で一昼夜かけて、日本橋に運び込まれたので、一般の人々が食べる頃は、塩味が付いていて、
そのまま焼いても美味しかったそうです。続きを読む

柳の馬場

images今日は「柳の馬場」です。
中国・明代の笑話集「應諧録」中の小咄が原型とみられますが、詳しいことは判っていません。
明治期は四代目橘家円喬の名演が、いまだに語り草になっています。
幼時に見た六代目圓生師が語るには、円喬は座って演じているのに、杢市が枝にぶら下がった足先に、
本当に千尋の谷底が黒々と広がって見えたとか。
そのせいか、圓生師は、生涯この噺を手掛けませんでした。
また、初代圓左師が得意としたそうですが圓左師のは、ぶら下がった足先が直ぐに地面で、
お殿様がからかってる感じがよく出ていたそうです。どちらを取るかでしょうねえ。
一朝老人から正蔵師へ伝わりました。

治療の腕より口が達者な按摩の杢市ですが、ある旗本の殿さまのごひいきに預かり、
足げく揉み療治に通っているのですが、ある日、いつものように療治が終わってからのよもやま話で、
目の見えない人間をいじめる輩への怒りを訴えたところから口が滑って、自分はいささか武道の心得がある、
と、ホラを吹いてしまいました。
殿さまが感心したのでつい図に乗って、剣術は一刀流免許皆伝、柔術は起倒流免許皆伝、
槍術は宝蔵院流免許皆伝、薙刀は静流免許皆伝と、つい図に乗って仕舞います。
弓術は日置流免許皆伝と言ったら、殿様が「的も見えないそちが弓の名手とはちと腑に落ちんぞ」
と文句を言うと、そこは心眼で、とごまかします。

調子に乗り、ご当家は三河以来の馬術のお家柄なのに、りっぱな馬場がありながら馬がいないというのは惜しい、自分は馬術の免許皆伝もあるので、もし馬がいればどんな荒馬でも乗りこなしてみせるのに残念だ。
と言ったからさあ大変。
「実はこの間、友人の中根が『当家に馬がないのは御先祖にも申し訳あるまい。
拙者が見込んだ馬を連れてきてやろう』と言っていたが、
その馬が荒馬で、達人の中根自身も振り落とされてしまった。
きさまが免許皆伝であるのは幸い。一鞍責めてくれ」
こう言われてしまいました。

しかたなく、今のは全部うそで、講釈場で「免許皆伝」と流儀の名前だけを仕入れたことを薄情。
しかし、殿さまは
「身供に術を盗まれるのを心配してさようなことを申すのであろう」
と、全然取りあってくれない。
若侍たちにむりやり抱えられ、鞍の上に乗せられてしまいました。

馬場に向かって尻に鞭をピシッと当てられたからたまらず、馬はいきり立って杢市を振り落とそうとします。
半泣きになりながら必死にぶるさがって、馬場を半周ほどしたところに柳の葉が目に入ります。
この枝に慌てて飛びつくと、馬は杢市を残して走っていってしまいました。

「杢市、しっかとつかまって手を離すでない。その下は谷底じゃ。落ちれば助からん」
「ひえッ、助けてください」
「助けてやろう。明日の昼間までには足場が組めるだろう」

冗談じゃない。もう腕が抜けそうだ。

「長年のよしみ、妻子老母は当屋敷で養ってつかわす。心置きなく、いさぎよく死ね」
耐えきれなくなり「南無阿弥陀仏」と手を離すと、
地面と、足先ががたった三寸。

按摩と言う職業は揉み療治、鍼灸などを業とし、座頭の位がもらえて初めて営業を許されました。
盲人だけでなく、目が見える者も多く、その場合は座頭の資格ではなく、頭を丸めて医者と名乗っていたそうです。続きを読む

正蔵師が作った「二つ面」と言う噺

nuenokai(omote)今日は「二つ面」と言う噺です。
これは八代目正蔵師の作です。
最もこの噺には前段とも云うべき噺がありまして、「生きている小平次」と言う怪談噺ですが、この小平次と言うのが、「小幡小平次」と言う人物で、山東京伝の『復讐奇談安積沼』や鶴屋南北の『彩入御伽草』などの江戸時代の怪談話に登場する架空の歌舞伎役者と言う事です。
で、この噺にも登場します。
幽霊なのに誠に人間臭く出てきます。

初席の四日目の事、怪談噺を得意とする噺家の柳亭西柳が高座を済ませ、弟子の佐太郎と近頃の客について話ながら帰っていると、追いはぎが突然金を出せと声をかけます。

佐太郎は驚いて、今日の割を盗られてはなるまいと逃げていってしまいます。
残された西柳は、追いはぎも初仕事ということであふれては縁起が悪いので、何か差し上げたいと、羽織と財布の中の銭を渡そうとします。
ところが、追いはぎはギャーと言う声を上げて逃げてい来ました。

師匠という声がするので見ると、西柳が売り物にしている怪談噺の主人公小幡小平次の幽霊が現れます。
丁寧に挨拶をし、深川の寄席に師匠の噺を聞きに来たというのです。
松島町に部屋があるので来るように誘われ、肩につかまり目をつむると一瞬にして到着しました。

この家は恨みのあった多九郎の子孫のもので、恨みを遂げると、今度はその子孫の守り神になると言います。
寿司をご馳走になり話をし、その中で、怪談話で最近の客は笑うが、それは強がってのこと。
師匠の面の作りはいいが、一つだから客が笑う。後ろにも面があれば客はぎょっとする、二つ面にすれば笑わないと教わります。

幽霊と別れた後、二つ面については忘れていたのですが、秋口になって、風邪を引いたのが長引きます。
その間、弟子の佐太郎が寄席で怪談噺をやっています。
それを知った西柳は二代目柳亭左柳の名を継ぐように勧め、小平次の幽霊から教わった二つ面について伝授します。

その後、佐太郎は師匠の好物の寿司を買いに出かけます。
その時、再び小平次の幽霊が現れ、守り神として箔がつき、極楽へ行くことになり当分会えないので来たとい居ます。
そして、極楽に行った幽霊が娑婆に残した寿命が積もり積もって三百年あるので師匠にやると言って消えてしまいます。
その後、佐太郎が帰って来て、小平次の幽霊とのやり取りを話すと
「へえ〜、師匠結構で」
「何が結構なことがあるものか。怪談噺をやるよりか、ほか能のない人間で、おまけにひどい貧乏人が三百年も生きたら世間の人が笑うだろう」
「笑う?ああ、笑う人には二つ面をお見せなさい」

これは、正直、怖くありません。
むしろ面白いと形容したほうが良い噺です。実は私は好きな噺の一つです。
噺家の世界も垣間見れるので、楽しいですね。
「生きている小平次」では、多九郎が「小平次は生き返る」と語っているので、この噺に続くのでしょうね。
こちらの方はかなり怖いです。
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