『出来心』
今日はこの噺です。ちゃんと取り上げるのは初めてかも知れません。別名「花色木綿」とも言います。
『原話』
1807年の喜久亭寿曉のネタ帳「滑稽集」に「出キ心」とあります。内容は1808年の「江戸前噺慢」の「盗人」とほぼ同じですのでこあのあたりだと考えられます。
『演者』
まあ、ほとんどの噺家さんがやりますね。
『ストーリー』
泥棒の親分が新米を呼んで、お前は泥棒に向いてないからやめた方がよいと説教すると、まじめに悪事に励みますと言う。
「じゃ、まず空き巣の修行から始めろ。もし、見つかったら、出来心でしたと謝るんだ」
と教わり、何軒目かで空き家を見つけて忍び込むと、越中褌以外何にもない家だった。おじやの食い掛けを食っているところに、主の八公が帰って来たので隠れた。八公は食べられたおじやを見て、大家さんに泥棒が入ったと言えば店賃を延ばしてくれるだろうと思い、大家さんを呼び、そのように言うと、大家さんは盗難届けを出すことになった。
盗られたものは、布団が一組、黒羽二重の紋付き、麻蚊帳、総桐の箪笥が一竿。とあることないことを言うので、それを隠れて聴いていた泥棒が出てきて
「そんなに盗っちゃいねえ」
と縁の下から泥棒が出て来たので見つかってしまった。そこで、出来心ですと謝って許してもらった。
事情が判った大家が、八公に向かって、
「ところでお前は何だってあんなにたくさんのものを盗られたって嘘を吐いたんだ」
「へへへ、大家さん、ほんの出来心で」
『能書』
この噺の中で大家さんが盗まれた品物を詳しく聞いていると、何でも「うらは花色木綿、丈夫で暖か」八五郎が返し、泥棒が出て来て「裏に逃げる」「裏は花色木綿」と下げると題が「花色木綿」になります。
『ネタ』
私の好きだった二代目桂文朝師は「花色木綿」で落とすことが多い理由として、
「ここから先は(うけ)を戻せるほどのヤマがないので案外難しいのですよ」
と語っていました。
「蛇足」
まあ、肩のこらない楽しい噺ですね。噺で泥棒の名前を聴く演出もあるそうですが、この時知り合いの噺家の名前を言ったりして受けを狙う演出もあります。
落語に出てくる泥棒はまぬけで愛すべき空き巣の失敗をおおらかに笑う噺が多く、いかにのどかな江戸時代でも犯罪の実態は陰惨なものが多かったことを考えれば、落語の泥棒は、むしろ、こういう泥テキばかりなら良い、という庶民の願望なのでしょうね。
※この記事が「編集部の推し」に選ばれました
https://blog.livedoor.com/news/https://blog.livedoor.com/news/
今日はこの噺です。ちゃんと取り上げるのは初めてかも知れません。別名「花色木綿」とも言います。
『原話』
1807年の喜久亭寿曉のネタ帳「滑稽集」に「出キ心」とあります。内容は1808年の「江戸前噺慢」の「盗人」とほぼ同じですのでこあのあたりだと考えられます。
『演者』
まあ、ほとんどの噺家さんがやりますね。
『ストーリー』
泥棒の親分が新米を呼んで、お前は泥棒に向いてないからやめた方がよいと説教すると、まじめに悪事に励みますと言う。
「じゃ、まず空き巣の修行から始めろ。もし、見つかったら、出来心でしたと謝るんだ」
と教わり、何軒目かで空き家を見つけて忍び込むと、越中褌以外何にもない家だった。おじやの食い掛けを食っているところに、主の八公が帰って来たので隠れた。八公は食べられたおじやを見て、大家さんに泥棒が入ったと言えば店賃を延ばしてくれるだろうと思い、大家さんを呼び、そのように言うと、大家さんは盗難届けを出すことになった。
盗られたものは、布団が一組、黒羽二重の紋付き、麻蚊帳、総桐の箪笥が一竿。とあることないことを言うので、それを隠れて聴いていた泥棒が出てきて
「そんなに盗っちゃいねえ」
と縁の下から泥棒が出て来たので見つかってしまった。そこで、出来心ですと謝って許してもらった。
事情が判った大家が、八公に向かって、
「ところでお前は何だってあんなにたくさんのものを盗られたって嘘を吐いたんだ」
「へへへ、大家さん、ほんの出来心で」
『能書』
この噺の中で大家さんが盗まれた品物を詳しく聞いていると、何でも「うらは花色木綿、丈夫で暖か」八五郎が返し、泥棒が出て来て「裏に逃げる」「裏は花色木綿」と下げると題が「花色木綿」になります。
『ネタ』
私の好きだった二代目桂文朝師は「花色木綿」で落とすことが多い理由として、
「ここから先は(うけ)を戻せるほどのヤマがないので案外難しいのですよ」
と語っていました。
「蛇足」
まあ、肩のこらない楽しい噺ですね。噺で泥棒の名前を聴く演出もあるそうですが、この時知り合いの噺家の名前を言ったりして受けを狙う演出もあります。
落語に出てくる泥棒はまぬけで愛すべき空き巣の失敗をおおらかに笑う噺が多く、いかにのどかな江戸時代でも犯罪の実態は陰惨なものが多かったことを考えれば、落語の泥棒は、むしろ、こういう泥テキばかりなら良い、という庶民の願望なのでしょうね。
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