20110403074726b89『うどん屋 』
今日は「うどん屋」と言う噺です。寒い冬の夜が連想されれば成功と言われている噺です。

【原話】
上方落語「かぜうどん」を明治期に三代目小さん師が東京に移植したもので、代々柳家の噺とされています。大正3年の二代目柳家つばめ師の速記では、酔っ払いがいったん食わずに行きかけるのを思い直してうどんを注文したあと、さんざんイチャモンを付けたあげく、七味唐辛子を全部ぶちまけてしまいます。
これを、昭和初期に六代目春風亭柳橋師が応用し、軍歌を歌いながらラーメンの上にコショウを全部かけてしまう、改作「支那そば屋」としてヒットさせました。

【ストーリー】
夜、市中を流して歩いていた、うどん屋を呼び止めたのはしたたかに酔った男。
「仕立屋の太兵衛を知っているか?」と言い出し、うどんやが知らないと答えると、問わず語りに昼間の出来事を話し出す。

 友達の太兵衛のひとり娘、みい坊が祝言を挙げた。あんなに小さかったみい坊が花嫁衣装に身を包み、立派な挨拶をしたので胸がいっぱいになった・・・。うどんやが相づちを打つのをいいことに、酔客は同じ話を繰り返すと、水だけ飲んでどこかに行ってしまう。
 ただで水だけ飲まれたうどんや、気を取り直して再び町を流すと、今度は家の中から声が掛かるが、
「赤ん坊が寝たところだから静かにして」
 でかい声はだめだ、番頭さんが内緒で店の衆に御馳走してやるってんで、ヒソヒソ声で注文するのが大口になるんだと思った矢先、ヒソヒソ声で、鍋焼きの注文。
 こりゃ当たりだなと、ヒソヒソ声で「さぁどうぞ」客が食べ終わって、勘定のときに
「うどん屋さんも風邪ひいたのかい」

【演者】
八代目可楽師、五代目小さん師、現役では小三治師が素晴らしいです。

【注目点】
鍋焼きうどんといえば、天ぷらに卵野菜などがたくさん入ったものを考えますが、
この落語に出てくる鍋焼きうどんは、、かけうどんを鍋で煮こんだモノの様です。
三代目小さん師が初めてこの噺を演じたときの題は、「鍋焼うどん」という題でした。
全編を通して、江戸の夜の静寂、寒さが大事な噺でもあり、小さん師はよくその情景を表しています。
今日の音源で特筆なのは、小さん師のうどんをすする音に”注耳”して下さい。
確実に蕎麦とうどんの食べ分けが出来ています。正に名人芸ですね。

『能書』
昔は商家などに努めていた者は夜にお腹が空いた時などにこのようなうどん屋や蕎麦屋を呼び止めて奉公している者に食べさせた事があったそうです。そんな時は一件で完売となったそうです。

『ネタ』
個人的な思い出を・・・晩年、脳梗塞で倒れられてからの小さん師匠はハッキリいって往年の芸は蘇りませんでした。
でも、ある時、寄席で飛び入りで師匠が出演したのです。
この頃、たまに、そんな事があるというウワサは聞いていましたが、まさか自分が行った時に当るとは思ってもみませんでした、
その時演じたのがこの噺でした。
前半は、この頃の感じであまり感情が入らない口調でしたが、後半からは乗ってきました。
そして、うどんを食べるシーンで、「ふっ、ふー」と冷ます処で私は鳥肌が立ってしまいました。
たったそれだけで、寄席を深夜の冬の街角にしてしまったのです。
恐れ入りました、ホント、凄かったです。