ede3b4ab『二十四孝』
これも夏の噺ですので今のうちにやっておきます。

【原話】
安永9(1780)年刊の笑話本「初登」中の「親不孝」。
これは、中国・元代(1271〜1368)の教訓的説話から、王祥と孟宗の逸話を採ったものを主にし、それらに呉孟のくだりほか、いくつかの話を加えて作られました。

【ストーリー】
乱暴者の熊。のべつ女房や母親とケンカをしています。
見かねた大家が、中国の親孝行者・二十四人の行いを伝える「二十四孝」から例をとって説教します。
池の氷の上にねそべって氷を溶かし継母のために鯉をとった王祥や、寒中に涙で雪を溶かし母親にタケノコを食べさせた孟宗の話などなど。
孝行すれば大家が小遣いをくれることになった熊、これを機会に小遣いを稼ごうといさんで家に帰りますが、途中で会った友達にはとんちんかんな説教を始めます。

そんな中、呉猛(ごもう)の「自分が裸になって親のそばにいて自分が刺され続けることで親を蚊から守り続けた」という話に、「酒の匂いに蚊は誘われる」といううわさを合わせたものとして「全身に酒を吹き付けて母上のそばにいることで母上を蚊から守ろう」という少しはマシな行動に出ようとするのですが、
口に含んだお酒を間違えて飲んでしまってからはついつい歯止めがきかなくなり、挙げ句の果てには酔いつぶれて寝てしまいます。

あくる朝、八五郎が目を覚ますとあれだけ酒まみれでしかも裸で寝ていたというのに、蚊に刺されている箇所は一ヶ所もありませんでした。
これも「親孝行の徳」だと思い、喜んでいると、そばにいる母親が
「何言ってるの。私が一晩中寝ないであなたを仰いでいたんだよ」

【演者】
六代目圓生師、八代目正蔵師や三代目好柳師を始め、故喜多八師や十代目文治師とか三代目金馬師や五代目柳朝師等数多くの演者が演じています。

【注目点】
取り入れる逸話の取捨選択や順番は、演者によってまちまちですが、総じて親孝行の噺です。

『能書』
江戸時代は儒教の教え(朱子学)が盛んだったので、この噺の故事は皆馴染み深い事柄だったので、
笑いも多くとれたそうです。
今はどうなんでしょうね?

『ネタ』
今では寄席でもそれほど掛かる演目ではない気がしますが、それも時代に合わなくなったのなら、少し悲しいですね。