らくご はじめのブログ

落語好きの中年オヤジが書いてる落語日記

2019年01月

「首提灯」という噺

a89661b6『首提灯』
え〜毎日寒いですねえ。そこで今日はこの噺です。これ冬の噺なんですね。

【原話】
原話は、安永3年(1774年)に出版された笑話本・「軽口五色帋」の一遍である『盗人の頓智』だそうです。
もともと小ばなしだったのを、明治期に四代目橘家円蔵が一席にまとめたものです。

【ストーリー】
博打で懐の暖かい江戸っ子の酔っぱらいが芝山内を通りかかりました。
最近辻斬りや追いはぎが出るのでぶっそなので、景気付けに大声で通り抜けようとしたら武士に呼び止められました。
 辻斬りか追い剥ぎかと一瞬ビックリしましたが、その様でもなさそう。
安心して酔っぱらった勢いで武士に反抗し毒づきます。
武士は、「麻布にめえるにはどうしたらいいか 」と聞いてきたが、道の聞き方を改めて説教し、さんざん武士に楯をつきます。
「切りたかったら、切りやがれ」と悪口狼藉。
その上、痰を紋服に吐きかけて悪口を並べる始末。
 武士の顔色が変わると改めて、もう一つ吐きかける。さすがの武士も我慢が出来ず、雪駄をならして後ろから腰をひねって「えぃ!」。
チャリーンと鞘に収める早業は目にも止まらぬさまで、その後、謡曲を謡いながら去って行きました。
それでも後ろ姿に毒ずきます。、品川の女郎との一人のろけをしていると、「俺の首はこんな建付が悪くは無いんだがな?声がかすれてどこからか声がもれているぞ」。ガックと首が落ちそうになる所をかろうじて両手で直し、もしかしたらと、首筋を触って血が付いているのを見つけ、「野郎、やりやがったな」
そこに近くで火事が出て、人が大勢出てきて混み合ってきました。
弓張り提灯を持った人が駆けて来るし、「じゃまだ、じゃまだ!」とぶつかる者も出始めます。
「こちとら壊れ物を持っているのだ、落っこどしては大変」
と自分の首を 提灯のようにヒョイと差し上げ「はいゴメン、はいゴメン、はいゴメン!」

【演者】
圓生師匠はこの噺で芸術祭賞を受賞しています。
他には正蔵師、小さん師、志ん朝師等が演じています。特に圓生師、正蔵師は、四代目円蔵師直伝だそうです。
志ん朝師は剣道の達人であった小さん師に刀の使い方を見てもらったそうです。

【注目点】
八代目正蔵師だと火事見舞いに行く途中という設定であるのに対し圓生師だと単なる火事見物なんですね。そこら辺が面白いですね

『能書』

江戸時代、芝山内と呼ばれた増上寺の境内は、暗がりで常夜灯が置かれていたそうです。
それだけ暗くて寂しい所だったのですね。

『ネタ』
圓生師によると「酔っているのだが本当に酔っていては噺が成り立たない」ので、その加減が大事だそうです。

「夢金」という噺

57『夢金』
大寒に入り寒さも峠ですが、今日は真冬の寒さが身にしみるようなお噺です。

【原話】
安永2年(1773年)に出版された笑話本・「出頬題」の一遍である『七福神』。別題として「欲の熊蔵」「錦嚢」などがあります。

【ストーリー】
欲深い船頭の熊は、今夜も二階で「百両欲しい」と寝言を口にしながら眠っています。
雪の降りしきる静かな晩だけに、金勘定をしているのではと、泥棒に勘違いされはしないかと気が気でない船宿の夫婦。
その時、おもむろに戸を叩く音がします。ようやく戸を開けてみると、文金高島田を身に付けた綺麗な女性を連れた、およそその相手に似つかわしくない浪人風情の男が立っています。
事情を聞くと妹を連れての芝居鑑賞の帰りで、屋根船をあつらえたい旨を伝えてきたが、肝心の漕ぎ手がいないからと、一旦店の者は断るのですが、そこに聞こえてきたのが熊の寝言で、ならば酒代をはずむからということで、熊を船頭にいざ出発します。
舟が進み始めてしばらくした時、男が熊に相談を持ちかけてきたのですが、その内容は連れている女は妹でもなんでもなく、懐に大金を持っているから連れてきたということで、熊の欲深いところを見込んで二人で殺して金を山分けしようという、とんでもないものでありました。
駄賃を2両くれるというのですが、武士が泳ぎが出来ないと分かると、人殺ししてまで金は欲しくないし、2両とはしみったれているので嫌だと、震えながら交渉。
すると山分けにしよう、と相談が決まった。船の中で殺す訳にはいかないので、中洲に降ろしてそこで殺す事に決まりました。
浪人をまず中洲にあげといて、とっさに船を大川に引き戻し、「もー少しで、上げ潮になって背が立たないぞ〜」悪態を付きながら船をまなべの河岸に着けて、色々聞くと本町のお嬢さんと分かりました。
 家に連れて行くと、大騒ぎの最中。お礼は後日伺うが、まずは身祝いと酒手を差し出します。
どうせ殺しを手伝っても、その後で斬り殺されてしまうのが関の山と、断りつつ受け取ったが、失礼な奴でその場で包みを破いて中を見ると、50両が二包み。「100両だ! ありがてぇ」両手でわぁ!と握りしめると、あまりの痛さで目が覚めた。
「アァ…夢だ」

【演者】
最近では古今亭志ん朝師がいいです。勿論六代目圓生師も抜群です。現役の若手では柳家三三師が抜群ですね。その他にも達者な方が多くいます。

【注目点】
そのタイトルからネタ割れしてしまうのですが、果たしてどこからどこまでが夢の中の出来事なのか、そのあたりを想像しながら噺を楽しみたい噺ですね。
それと、真冬の夜、深々と雪が降る状況をどう描写するか? が重要ですね。
サゲに来て、「夢」と「金」の正体が分かる仕組みになっていますが、最近ではあまり綺麗なサゲでないと言われているので、貰った金を手にして「百両〜」と叫んで、目が覚めるといったサゲなどが一般的になっています。

『能書』
落語と講談の違いですが、講談では「断り口調」と言って、地の口調で登場人物を説明するのですが、落語は噺の中で登場人物の口調で説明します。「おや、タバコを吹かし始めたな……良い煙草入れじゃねえか」等と言う感じです。この噺は落語、それも落とし噺でありながら、断り口調が多く出て来ます。

『ネタ』
男が頼んだ船は”屋根船”と言います。
屋根船とは、屋根のある小型の船で、屋形船より小さく、一人か二人で漕ぐ屋根付きの船。夏はすだれ、冬は障子で囲って、川遊びなどに用いた船で、別名、日除け船とも言いました。

「味噌蔵」という噺

ef2b762d寒くなって参りました。大寒ももうすぐですね。という訳でこの噺です。
『味噌蔵』
木枯らしが吹く頃のケチンボさんのお噺です。そのしみったれが笑いを誘います。

【原話】
1736年頃の「軽口大矢数」に載っている米澤彦八作「田楽の取り違へ」が元のお噺です。

【ストーリー】
驚異的なしみったれで名高い、味噌屋の主人の吝嗇(しわい)屋ケチ兵衛さん。
嫁などもらって、まして子供ができれば経費がかかってしかたがないと、いまだに独り身。

心配した親類一同が、どうしてもお内儀さんを持たないなら、今後一切付き合いを断る、商売の取引もしない、と脅したので、泣く泣く嫁を取りました。
赤ん坊ができるのが嫌さに、婚礼の晩から新妻を二階に上げっぱなしで、自分は冬の最中だというのに、薄っぺらい掛け蒲団一枚で震えながら寝ります。
が、どうにもがまんできなくなり、二階の嫁さんのところに温まりに通ったのが運の尽き。
たちまち腹の中に、その温まりの塊ができてしまいました。

 妊娠した嫁を里に返し、出産費用を節約する等をして節約します。
やがて男の子が生まれ、嫁の里に行くことになりました。
火の始末にはくれぐれも注意し、貰い火を受けたら味噌で目張りをしてでも、財産の味噌蔵だけは守るようにと言い残して出掛けます。

旦那が泊まりの隙に、帳簿をごまかして宴会をやろうと皆で番頭に言って、刺身や寿司などを取り寄せます。
近所の豆腐屋には、冷めると不味いから、焼けた順に少しずつ持って来るように味噌焼き田楽を注文します。

 宴たけなわの所へ、旦那が戻って来たからたまりません。カンカンに怒り、全員生涯無給で奉公させると言い、酔っ払いを寝かせます。
 そこへドンドンと戸を叩く音。外から「焼けて来ました」の声。「え、火事だよ、どこだい」「横町の豆腐屋です四、五丁焼けましたが、あとどんどん参ります」驚いて旦那が戸を開けると、プーンと味噌の焼ける匂い。
「こりゃいかん、味噌蔵に火が入った」

【演者】
昭和の噺家さんなら三代目桂三木助師が有名です。赤螺屋の旦那が特に良いですね。
噺の中に現代的なクスグリを入れて、受けました。又八代目三笑亭可楽師も有名です。ぼやくようなつぶやきが楽しいです。
柳家小三治師も良いですね。こちらは店の者の視点に立って語られています。それも面白いと思います。

【注目点】
やはり旦那が出先から帰って来るシーンですね。それまで店の者の馬鹿騒ぎのシーンから一転して木枯らしが吹く夜の江戸の街に場面が切り替わります、ここを上手に演じられるか? ですね。

『能書』
噺の中で、火事の時、味噌で蔵に目塗りをすると言う下りですが、非常時には実際あったそうです。最も後でそれを剥がしてオカズにする事は無かったそうです。

『ネタ』
口うるさい上司にその言うことを聞かなければならない部下という風に設定を置き換えて聞けば、身にしみて感じる人も多いかも知れませんね。
日頃の鬱憤を晴らす部下の抵抗は、どの時代にでもあったと言う事ですね。
前回の「二番煎じ」も火事の噺です。これもそうですが、如何に江戸と言う所は火事が多かったかと言う事ですね。

「二番煎じ」という噺

206c91bb「季節も「小寒」に入りまして、これから暫くが一番寒い季節になります。インフルエンザが猛威を奮っているそうですが、くれぐれもお気をつけ下さい。と言う訳でこの噺です。
『二番煎じ 』
 寒くなって来ましたらやはり鍋が恋しくなりますね。そんなお噺です。

【原話】
元禄3年(1690年)に出版された江戸の小咄本『鹿の子ばなし』に掲載された「花見の薬」を上方で同時期に改作し、夜回りの話とした『軽口はなし』の「煎じやう常の如く」だそうです。
大正時代に五代目三遊亭圓生師が東京へ移したといわれています。
上方では初代、二代目桂春團治師、二代目露の五郎兵衛師らが、東京では、六代目柳橋先生や八代目可楽師らが得意としました。

【ストーリー】
町内の旦那衆が火事を防ぐため、火の番の夜回りをすることになりました。
番小屋に集まり、集まった顔ぶれを二組に分け、交代で町内の見廻りをはじめます。
凍てつくような江戸の冬。金棒は冷たくて握れず、拍子木を打つのに懐から手を出すのも一苦労。
「火の用心」の声も北風に震えるようです。やがて番小屋に戻り、囲炉裏を囲む旦那衆。

すると、禁じられている酒を持ってきた人がいたり、猪鍋の用意をしてきた者がいたりします。
役人に見つかると面倒なため、酒を土瓶に移し、煎じ薬と称してそっと宴をはじめます。
猪鍋で楽しく酒を飲んでいると、番小屋の戸をたたく音がする。役人が見回りに来たのです!
一同はあわてて酒や鍋を隠し、役人を迎え入れます。
役人は「変わった事は無いかな?」等と聞きますが、気もそぞろ。
「あー、今わしが『番』と申したら『しっ』と申したな。あれは何だ」
「へえ、寒いから、シ(火)をおこそうとしたんで」
「土瓶のようなものを隠したな」
「風邪よけに煎じ薬をひとつ」
役人、にやりと笑って
「さようか。ならば、わしにも煎じ薬を一杯のませろ」
しかたなく、そうっと茶碗を差し出すとぐいっとのみ
「ああ、よしよし。これはよい煎じ薬だな。
ところで、さっき鍋のようなものを」
「へえ、口直しに」
「ならば、その口直しを出せ」
もう一杯もう一杯と、
酒も肉もきれいに片づけられてしまう。
「ええ、まことにすみませんが、煎じ薬はもうございません」
「ないとあらばしかたがない。拙者一回りまわってくる。二番を煎じておけ」

【演者】
これは有名なお噺ですので、演者も数多くいます。そんな中で個人的にお勧めなのはやはり古今亭志ん朝師ですね。兎に角鍋の食べ方が抜群です!
 柳家小三治師もいいですね。尤も色々な噺家さんが演じていますのでそれぞれの味があります。現役では瀧川鯉昇師がいいですね。何とも言えぬ可笑しさがあります。

【注目点】
 やはり鍋の食べ方とお酒の呑み方ですね。それぞれの個性がぶつかる場面ですから、注目して聴いて戴きたいです。
それと役人が出て来てからの皆の慌てぶりですね。その辺の演じ方にも注目して下さい。
噺を聴いて「鍋で酒が呑みたい」と思ったら噺家さんの勝ちですね。

『能書』
噺家さんもこの噺は演じていて楽しいそうです。出て来る役人も固いことを言わない粋な人物ですね。

『ネタ』
この噺では商家の旦那衆が夜回りをしていますが、本来は商家から人間を自身番に出す決まりでしたが殆どは「番太郎」と言う者を雇ってやらせていたのです。
 しかし、この人物は総じてだらしない人が多かったそうです。
町内の自身番に居たそうですが、前科前歴の怪しい人物が多かったとの記述もいあります。
「二番煎じ」とは本来、漢方薬の煎じ方の事で一度煎じた薬草に水を足して煎じた事に由来します。

その昔、ある年の11月に国立小劇場に「落語研究会」を聴きに行きました。トリは志ん朝師で演目は「文七元結」でした。落語史にに残る高座だったのですが、その時の仲入りが五街道雲助師で、演目がこの噺でした。その時の火の出る様な高座が忘れられません。

「一目上がり」という噺

837cca0f『一目上がり』
今日はこの噺です。この噺は別名「七福神」とも言われています。まあ今のうちしか出来ない噺ですね。
先日NHKの大河ドラマ「いだてん」を見たのですが、ビートたけしさんが古今亭志ん生師を演じていました。彼は以前に民放のドラマ「赤めだか」で立川談志師を演じましたが、正直、似合っていませんでした。でも今回はそれらしく見えます。本当の志ん生師の高座を見た事がありませんが、知らない世代を、それらしく見せる工夫はあったようです。

【原話】
天明7年(1787)刊の「新作落噺・徳治伝」(しんさくおとしばなし、とくじてん)の中の「不筆」からです。

【ストーリー】
隠居の家に年始の挨拶に訪れた八五郎。
建て増しをした部屋を見せてもらうと、書や色紙が掛けてありまる。
誉め方を知らない八五郎に隠居は「これはいい賛(さん)ですな」といって誉めれば周りが尊敬してくれると教えてくれました。

早速大家のところに行って試してみるが、賛ではなく詩(し)だという。
続いて医者の先生のところに行っていい詩だと誉めると「これは一休禅師の悟(ご)」だと言われます。
さん・し・ごと来たから次は六だと先回りをしてみたのたが、芳公のところで一本しかない掛け軸が出ました。
「賑やかな絵だな。男の中に女が一人混じっているが、間違いはないだろうな。」「バカ言うなよ」。
「なんて書いてあるんだ」、「上から読んでも、下から読んでも同じめでたい文なのだ。”ながき夜の とをの眠りの みなめざめ 波のり舟の 音のよきかな”」。「結構な六だな」と言うと「いいや、これは七福神の宝船だ」。

【演者】
昔は五代目古今亭志ん生、五代目柳家小さんや小圓朝師他色々な噺家さんがこの時期に演じていました。今でもそれは同じです。

【注目点】
ここでは七までで終わっていますが、そのあと芭蕉の掛け軸を「結構な八で」と誉めると「いや、これは芭蕉の句(九)だ」と続くやり方もあります。

『能書』
文字で表してしまうと賛・詩・悟・句と明白ですが、そこを話芸で聴かせるのが落語の面白いところですね。
いかにも「落語らしい落語」で、しかもおめでたい噺なので、初席等によく掛かります。

『ネタ』
「七福神」とは 福徳の神として信仰された七神で、布袋の他、恵比寿、大黒、毘沙門天、弁財天、福禄寿、寿老人。の神様の事を言います。(絵を参考にして下さい)

「橋場の雪」という噺

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正月の三日に地元と言っても良い亀有で落語を聴いて来ました。出演者は、昇也、左龍、菊之丞、三三、権太郎と言ったメンバーでした。顔ぶれでは豪華ですね。トリの権太楼師は「笠碁」でした。かなり作り変えていましたね小さん師とも違いましたね、サゲも変えていました。正直イマイチでしたね。昇也さんが面白かったですね。
 という訳で今日はこの噺です。

【原話】
大元は「雪の瀬川」と言う人情噺が元の噺で、この噺を直して文楽師が十八番「夢の酒」として演じました。
更に「隅田(すみだ)の夕立」「夢の後家」の二通りに改作されました。
それの「夢の後家」を文楽師が昭和10年ごろに「夢の酒」に改作しました。

【ストーリー】
商家の奥の離れに若旦那がいます。 こっそりと幇間の一八が忍んで来て、今日は瀬川花魁と会う約束だったじゃあないか、向島の料亭で瀬川が待っている、と言ます。 瀬川は、吉原で全盛の花魁。 
 女房のお花に内緒で抜け出した若旦那、瀬川の片えくぼのことなど考えている内に、吾妻橋を通り過ぎて、橋場の渡しの所まで来てしまいました。 
ちょうどその時、渡し舟が出たばかりで、土手の上の吹きざらし、寒いと思ったら、雪が降り出し、あたり一面真っ白。 
なのに自分だけ雪がかからないので、ふと見ると傘を差しかけてくれていたのが、お湯の帰りだという女中連れの三十に手がとどきそうな、いい女で、若旦那が三年前に亡くなった亭主に、よく似ている、近くなのでお茶でも差し上げたい、と言う。 丁度そこへ、渡し舟が戻って来てしまい、ここはこれまで。
 向島の料亭では、花魁はつい今しがた廓に戻ったという。
なんだと帰ろうとすると、渡し舟はあるが船頭がいません。 
そこへ小僧の貞吉が傘と足駄を持って迎えに来て、対岸の二階で先ほどの女が手招きしているのを目敏く見つけます。
 定吉は親父が深川の船頭だったから、渡し舟ぐらい漕げるのです。
石垣の間に蝙蝠傘を挟んだりすることはないという。 
貞吉に駄賃を一円、漕ぎ返すのにもう一円やって、女の家へ寄る事にします。 
「一献召し上がって」「じゃあ一杯だけ」 差しつ差されつやっているうちに、頭が痛くなって、次の間にとってあった布団に横になる。 
長襦袢になった女が、布団の隅の方にだけと入ってきました・・・
……「あなた、あなた」と女房のお花に起されると、 離れの炬燵の中で、夢を見ていたのでした。 
話を聞いて女房は泣き、若旦那は笑い、親父は怒る始末。 さっき駄賃を二円やったじゃあないかと言われて、釈然とせずに若旦那の肩を叩いていた貞吉が、居眠りを始めます。
 焼餅焼きのお花は「若旦那が橋場に出かける何よりの証拠、貞吉がまた舟を漕いでおります」

【演者】
これは最近では柳家三三師が落語研究会などで演じていますね。
昔のことですが、三代目柳家小さんの、明治29年の速記があります

【注目点】
「隅田の夕立」の方は円遊師が、夢の舞台を向島の雪から大川の雨に代え、より笑いを多くしたそうです。
「夢の後家」の方は、「夢の酒」と大筋は変りませんが、夢で女に会うのが大磯の海水浴場、それから汽車で横須賀から横浜を見物し、東京に戻って女の家で一杯、と、当時の明治らしさです。

『能書』
人情噺「雪の瀬川」(松葉屋瀬川)が「橋場の雪」として落し噺化され、それを鼻の園遊師が、現行のサゲに直し、「隅田(すみだ)の夕立」「夢の後家」の二通りに改作しました。
されに、「夢の後家」の方を、文楽師が昭和10年前後に手を加え、「夢の酒」として磨き上げました。

『ネタ』
文楽師も「夢の酒」を演じる以前はこの「橋場の雪」をしていたそうです。

 
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