2de13a5d『祇園会』
今日は夏の噺です。今年は祇園祭の山鉾巡行は中止だそうですね。そこで噺だけでもと取り上げました。
この噺の演題ですが、今は「祇園祭」と言うらしいです。

『原話』
原話は、天保年間に出版された笑話本・「如是我聞」の一遍である『都人』。別題は『京見物』です。

『演者』
昔はこの噺は八代目文治師の十八番で、他に演じる噺家さんも余りいなかったそうです。
特に三都の言葉を完璧にあやっつたそうで、凄いですね。
転機になったのは、五代目柳朝師の弟子正朝師がNHKの新人落語コンクールで演じてからです。
正蔵師は正朝さんに「コンクールだから短くやるのは仕方がないが、前半の江戸者三人が京都につく迄のダレ場をきちんとやらないと駄目だぞ」とアドバイスしたそうです。
正朝さんは12分にまとめて、最優秀賞を取りました。
それからは多くの噺家さんが高座に掛ける様になりました。

『ストーリー』
江戸っ子三人が連れ立って伊勢参りを済ませた後、京見物にやって来たが、金を使い過ぎてしまった二人は先に江戸に帰り、六条に叔父のいる男だけが京に残る。祇園祭の当日、茶屋に上がって一人で飲んでいると、いつしか京都と江戸の自慢話がはじまる。ところが相手になった男は、伏見の酒や京の町筋、祇園祭と、全てを「王城の地だから、日本一の土地柄だ」と自慢するばかりで、以前に訪れたことのある江戸を「武蔵の国の江戸」ならぬ「むさい国のヘド」とまで言い出す始末。江戸を散々馬鹿にされ、我慢ができなくなった江戸っ子が、今度は京都の町の面白くないところを上げて反論していくと、江戸と京都の祭りのどっちがいいかという話になり、二人の興奮はとどまる処を知りません……。
この先は実際に聴いて戴いた方が良いと思います。
字で読んでも面白く無いと思うのです。


【注目点】
一応「三人旅」の最後と言われていますが、この説に疑問を持つ噺家さんも居る様で、権太楼師や市馬師も、
本来は違う噺ではないか?と述べています。

『能書』
当時の江戸っ子が夢に見た一つがお伊勢参りで、今のように気軽に国内旅行が楽しめる時代とは異なり、
旅支度からして大変だった時代なので、伊勢を回って京都へと来る様な事になれば、気分は最高だったのでしょうね。

『ネタ』
今はあまりやりませんが、この後というかこの場に「およく」という芸者が登場して、何でも欲しがる欲深な人物として登場します。
少しサゲを書きますと、そのような性格だから注意しろとアドバイスを受けたので、江戸っ子は、・・・
「江戸はん、あんた商売は何どす?」
「聞いて驚くな。オレは死人を焼く商売だ!」
「そうどすか。おんぼうはんにご無心がおます。」
「おんぼうに無心とは何だ?」
「私が死んだら、タダで焼いておくれやす。」
とやり込められて仕舞います。
これも楽しい噺です。