fd9381e9谷文晁作 「綬帯鳥図」

『普段の袴 』
コロナウイルスの影響でどこも軒並み営業休止ですが寄席はやってますね。
そういう訳で今日はこの噺です。
【原話】
江戸古来の噺ですが、速記は見当たらないそうです。
八代目正蔵師が、二代目蜃気楼龍玉師(1867−1945?)門下の龍志師から教わり、その型が五代目柳家小さん師に継承されました。

【ストーリー】
江戸時代。上野広小路の御成街道には、お侍相手の骨董屋が多くあったといいます。
そのうちの一軒に、羽織袴、白足袋に雪駄履き、白扇をにぎった立派な侍が立寄り、
店の主人がもてなそうとすると「いや、今日は墓参の帰りじゃ。供の者にはぐれたのでここで待たせて貰おう」と一休み。
 上等な金無垢の煙管で煙草を吸い始めます。
煙管をくわえたまま鶴の掛軸をほめ、谷文晁の作ではないかと感心しているうちに、袴の上に煙草の火玉が落ちた。骨董屋の主が慌てて、焦げていると告げると「これは些か普段の袴だ」と平然と振舞う潔さです。
 これを見ていた粗忽者が、カッコ良さに惚れて、真似をしようとします。袴を持ってないので、大家の所に行って袴を借りて来るが、着物を借りるのを忘れて、上が印半纏、下が袴という変な格好で、骨董屋に向かいます。
 煙草盆を出させて、真鍮の煙管で煙草を吸い始め、予定通り鶴の掛軸をほめますが、
なかなか火玉が落ちないので、プッと吹いたら火玉が頭に飛びます。
 骨董屋の主が、おつむに火玉が落ちたと注意すると、「気にするねぃ、普段の頭だ」

【演者】
八代目正蔵師の他に八代目春風亭柳枝師も持ちネタにし、柳枝師の弟子だった、円窓師が演じています。
今でも五代目柳朝一門の噺家さんが寄席で演じます

【注目点】
御成街道とは、当時の神田の筋違御門(現・万世橋のあたり)から上野広小路にかけての道筋で、現在の中央通りです。
寛永寺に将軍が参拝する時に通ったのでこの名がつきました。

『ネタ』
谷文晁とは江戸時代後期の日本の画家で、江戸南画の大成者であり、その画業は上方の円山応挙、狩野探幽とともに「徳川時代の三大家」に数えられています。