1ad88560『応挙の幽霊 』
梅雨は明けませんが今日はこの噺です。
【原話】
明治の新聞記者で、遊芸的文芸作者もしていた鶯亭金升の作と伝われています。「明日までに起きるかしらん」という落ちが原作だそうです。これを二代目林家染丸師か桂文之助師が上方に移し、七代目春風亭柳枝師が東京に逆輸入したそうです。

【ストーリー】
書画骨董屋が客に、「応挙の絵だと思うんですがね」と、勧める。客は「オウキョでもラッキョでもいい。気に入った。明日届けてくれ」と、内金を払う。仕入れ値の10倍以上で売れて、「これだから、この商売やめられねえ」 これも掛け軸の幽霊のおかげだと鰻と酒を供える。「かかあがいたら、喜ぶだろうなあ」と、歌を一節唄うと、あれ?その鰻と酒が減っている。 急にあたりが暗くなり、涼しくなった。三味線の音とともに掛け軸から女幽霊が出てきた。
「こんばんわ、私は幽霊です。久しぶりに酒と鰻をいただいて、あたしゃ、嬉しくて…、そばに行ってもいい?」と彼女は骨董屋の横に来て、「もう一杯ちょうだい」と酒をせがむ。
 彼女いわく、どこでも幽霊の絵は三日か四日は掛けて眺められても後は女子供に怖がられてお蔵入り、ここでは認められて嬉しいというわけだ。「もう一杯」と女幽霊は骨董屋と差しつ差されつ、幽霊のつま弾く三味線に合わせて都々逸など唄って酒酌み交わす。明るく色っぽい幽霊はやがて酔っぱらって掛け軸に戻ったが、手枕で向こう向いて眠り込んでしまった。
 「明日の朝までに、この酔いが醒めれば良いが…」
すると幽霊が「明日の丑三つ時迄寝かせて下さい」

実はこの後もあり、
そのうちに朝になっても幽霊はまだ眠ったまま。
お得意先の旦那は、古道具屋が朝に掛け軸を届けるというのに持ってこないのでやきもきしている。
そこへ、古道具屋が来る。掛け軸は持ってきていないという。
旦那 「どうして持ってきてくれなかった。店に置いておいてもしょうがないだろう」
古道具屋 「もう少し寝かせておきとうございます」

【演者】
私がこの噺を最初に聴いたのは六代目蝶花楼馬楽師でした。その後入船亭扇橋師でも聴きましたね。私が大好きだった桂文朝師も演じていました。

【注目点】
当初は滑稽幽霊噺として高座に上っていたのもが新内節としてしたてられ、歌舞伎として大劇場で上演されたのは平成四年の「第四回宗十郎の会」でのことだったそうです。

『能書』
円山応挙と言う方は幽霊画で余りにも有名ですが、本来は動物や花鳥等を書いていました。
子犬の絵など、可愛くて私は好きです。
また、丸山派と言われる流派の祖でもありました。
幽霊の絵では、足元に明かりを灯すことで顔に陰影を付け、そのために足元がぼやけた幽霊を描きました。これが足のない幽霊の始まりだといわれています。
『ネタ』
六代目蝶花楼馬楽師はこの方は四代目小さん師の弟子で、五代目小さん師の弟弟子です。小さん師曰く「正面が切れねえ・・」と言ってました。