9dd31674-s『短命』
今日はこの噺です。またの名を「長命」とも言います。

【原話】
享保12年の『軽口はなしどり』の中の一編です。
この噺は簡単そうですが、実は鸚鵡返し等が難しい事や変に下品になってもイケナイので真打の噺とされているそうです。

【ストーリー】
ご隠居のところに八五郎が訪れて、三度死んだ伊勢屋の旦那の葬式の手伝いだという。不思議に隠居さんが思って尋ねると、伊勢屋のお嬢さんと最初に一緒になった色白の婿殿が亡くなり、二人目はごつい男だったがこれも亡くなり、三人目の亭主が一年足らずでこの間亡くなったので、
これで三度死んだと言うでしょ。どうしてこうも続けて死んじゃうのかねぇ、と八五郎。
 話を聞いたご隠居が、解説を始めます。
 店の方はすべて番頭が見ているので亭主は月に一、二回帳簿を見るだけで、普段やることがなく暇だ。
目の前には震付きたくなる様ないい女。
飯時には手と手が触れる。冬は炬燵で脚が触れる。周りを見ても誰もいない。となればやることは一つ。
短命だろう。
説明を受けた八五郎は、指から毒が移るのかとか、いい女を見つめて飯を食い忘れるとかトンチンカンなことを言うが、どうにか意味を理解して家に帰ります。
 女房に給仕をさせて、ご飯茶碗を渡す時に手と手が触れる。目の前には震付きたくなる様な、、、。
「あぁ、おれは長生きだ」 

【演者】
小さん一門を始め、色々な噺家さんが演じています。
小さん師のは七代目か可楽師から六代目蝶花楼馬楽師に伝えられたそうです。
歌丸師は「長命」で演じていましたね。

【注目点】
いわゆる『艶笑落語(バレ噺)』の範疇に入る噺でしょうが、戦時中なら禁演でしたが、今はこれくらいは、どうって事ありませんね。
この噺の聴き所は「遠まわしに説明する隠居と、なかなか理解できない八五郎都のやり取りですが、コレに限らず、実際の事でも鈍い人なんて居るものですね。

『能書』
伊勢屋の旦那の病気は昔は、「腎虚(じんきょ)」と言われました。
つまりはアッチの方が過ぎ、精気を吸い取られてあえなくあの世行きという訳ですね。

『ネタ』
志ん生師版では、最後のかみさんとの会話にくすぐりを多く用いるなど面白く工夫し、
サゲは「おめえとこうしてると、オレは長生きができる」というオチでした。