aefe929c『竹の水仙 』
季節的には少し疑問ですが水仙が春の花なので取り上げました。

【原話】
元は講釈ネタですので、基本的にはオチはありません。左甚五郎物として有名なのは三木助師の「ねずみ」が有名ですね。
「ねずみ」は浪曲師の広沢菊春師に「加賀の千代」と交換にネタを譲ってもらい、脚色して落語化したものです。

【ストーリー】
左甚五郎が江戸へ下る途中、名前を隠して、藤沢宿の大松屋佐平という旅籠(はたご)に、宿をとった。
ところが、朝から酒を飲んで管をまいているだけで、宿代も払おうとしないので、
たまりかねた主人に追い立てを食うが、甚五郎、平然としたもので、ある日、中庭から手頃な大きさの竹を一本切ってくると、それから数日、自分の部屋にたてこもる。

心配した佐平がようすを見にいくと、なんと、見事な竹造りの水仙が仕上がっていた。
この水仙は昼三度夜三度、昼夜六たび水を替えると翌朝不思議があらわれるが、その噂を聞いて買い求めたい
と言う者が現れたら、町人なら五十両、侍なら百両、びた一文負けてはならない、と言い渡す。

佐平が感嘆していると、なんとその翌朝、水仙の蕾が開いたと思うと、たちまち見事な花を咲かせたから、
一同仰天。
そこへ、たまたま長州公がご到着になり、このことをお聞きになると、ぜひ見たいとのご所望。
見るなり、長州公
「このような見事なものを作れるのは、天下に左甚五郎しかおるまい」
ただちに、百両でお買い上げになった。
五郎、また平然と「毛利公か。あと百両ふっかけてもよかったな」

甚五郎は半金の五十両を宿に渡し江戸に向かいました。
上野寛永寺の昇り龍という後世に残る名作を残すなど、いよいよ名人の名をほしいままにしたという、
「甚五郎伝説」の一説。

【演者】
五代目柳家小さん師の十八番で、小さん師のオチのない人情噺は珍しいですね。
寄席等では桂歌丸師、柳家喬太郎師などが演じるほか、若手でも手掛ける者が増えているようです。
圓生師は「三井の大黒」とセットで演じてもいます。
演者によって、甚五郎の雰囲気が違ってくるのも面白いですね。

【注目点】
この噺や「抜け雀」は宿屋の主が脇役でありながらも主役級の活躍をしていますね。この宿屋の主をどう演じるかが重要なんだそうです。

『能書』
オチが無いのですが、調べるとこんなのがありました。夫妻は宿を去ろうとする甚五郎を止め、「どうかこのあとも、300両の竹の水仙をこの宿で作り続けてもらえないか」と聞くが、甚五郎はそれを拒む。理由を聞くと、「竹に花を咲かせると、寿命が縮まるから」というサゲもありますが、これは数十年から百数十年に一度花を咲かせ、竹ごと枯れてしまう事に掛けたものですね。

『ネタ』
実際の左甚五郎は東照宮の「眠り猫」や維新で燃えてしまいましたが、上野寛永寺の「登り龍」は有名ですが落語の世界の彫刻の名人伝説は創作なんだそうです。