ea9415b4『親子酒』
今日は寄席でも良く掛かるこの噺です。

【原話】
宝永4年(1707)刊、露の五郎兵衛作の笑話本「露休置土産」中の「親子共に大上戸」で、「親子茶屋」と並んで飲兵衛噺としては最古のものです

【ストーリー】
ある商家に、共に酒好きな大旦那と若旦那の親子が居ました。
息子の酒癖が非常に悪いということで、父親である大旦那が心配し、「お前だけに酒を止めろとは言わない。共に禁酒をしよう」と話をします。
 息子も承知し、しばらくは何事もなかったのですが、2週間ほど経つと、他に楽しみのない大旦那は酒が恋しくて仕方がなくなります。
 息子が出かけていたある晩、女房に何とか頼み込み、遂に酒に手を出してしまのですが、
ホンの一杯のつもりが、 したたかに酔い、気分も良くなっているところへ、息子が帰ってきます。
 さあ大変。慌てて場を取り繕い、父親は「酔っている姿など見せない」と、息子を迎えるのですが、帰ってきた息子も同様にしたたかに酔っている有様で、呆れた父親が
「何故酔っているんだ」
 と問うと、出入り先の旦那に相手をさせられたと言い、
「酒は止められませんね」
 などと言います。父親は怒り、女房に向かい、
「婆さん、こいつの顔はさっきからいくつにも見える。こんな化け物に身代は渡せない」  すると息子は、
「俺だって、こんなぐるぐる回る家は要りません」

【演者】
三遊亭圓朝師が「親子の生酔い」として速記を残している他は、独立した演目となったのは大正になってからだそうです。
戦後の演者では、志ん生師、小さん師、可楽師、馬生師等がいます。まあ今では多くの噺家が演じています。

【注目点】
この噺の眼目はやはり飲む仕草でしょうね。
それから親父さんが段々酔っ払って、口調が怪しくなる処とか、肴の烏賊の塩辛を美味しそうに食べる処何んかも見所ですね。
今では芸協の寿輔師がよく演じています。

『能書』
アルコール飲料のとりすぎによる病的症状は「急性酩酊」と呼び、アルコール依存症とは区別されるそうです。


『ネタ』
五代目小さん師は「この親子はお互いを認め合っていて息子は父親を尊敬しているし、父親は愛情を持って息子に接している。そのあたりをちゃんと演じて出さないと駄目」と語っていたそうです。