859b2b3d『御神酒徳利』
 え〜寒くなって参りました。そろそろ冬の噺でも良かろうと思いこの演題を上げました。

【原話】
この噺には占い八百屋」と言う題名もあり、柳家の噺家さんは題名は同じでもこちらの型で演じます。
三遊派は今日紹介するやり方で、圓生師が御前口演で演じた噺です。
元は上方落語で、三代目小さん師が移植しました。これが「占い八百屋」です。

【ストーリー】
日本橋馬喰町の大店の旅籠刈豆屋吉左衛門で働く通い番頭の善六さん。
年に一度の十二月十三日大掃除の時、先祖が徳川様から頂いた銀の葵のご紋の入った一対の家宝の御神酒徳利が台所に転がっているのを見つけました。
しまうところがないので水瓶の中に入れ、そのまま忘れてしまったのです。
このお神酒徳利で大神宮様にお神酒を上げるのが慣わしになっているんもですが、後で徳利が無いと大騒ぎ。善六さん家に帰ってから思い出したが、今更自分がしたとは言えません。
すると 、おかみさんは父親が易者だったので、徳利のあるところは判っているからソロバン占いをして、出せばいいと言ます。
生涯に三度だけ占う事が出来るという触れ込みで、占う事にしました。無事徳利が見つかったというので、ご主人は大喜び。
 この見事な、不思議な占いを宿に泊まっていた鴻池の支配人が知り、実は鴻池の一人娘が難病にかかり、その原因がどうしてもわからない、それを何とか占って欲しいと依頼をします。
善六さんは本当に占いが出来るわけがないので、引き受けたくないのですが、おかみさんにそそのかされて、こんなチャンスはめったにない上に三十両が貰える、占いは適当にやればいいからと大阪にしぶしぶ行くことになりました。
 善六さん、支配人と大阪に向かう道中、神奈川宿で、滝の橋の新羽屋 (にっぱや)源兵衛という鴻池の定宿に泊まろうと立ち寄った のですがどうも様子がおかしいのです。
訳を聴くと、女将は四,五日前に薩摩武士が泊り、金七十五両と幕府への密書が入っている巾着が無くなったので、内部の者に嫌疑がかけられ、主人源兵衛は取調中で連れていかれているとの事です。。
 これを聞いた支配人、じゃここにおいでになる占いの善六先生に見てもらったらいい、まだ1回あるからお願いしますという。
もとより占いを知らない善六さんは 、お供えにハシゴだワラジだ大きなおむすびだと夜逃げの算段。
すると夜中に女中が善六の部屋にやって来て「自分が親の病気を治したいばっかりに盗んだ」と白状しました。隠し場所は嵐で壊れた庭の稲荷の社 (やしろ)の床板に隠したと聞いて女を帰します。
早速宿の女将を呼んで、あたかもソロバン占いに掛が出たと、在りかを当てたので宿中大喜び。新羽屋から礼にもらった三十両の内女に5両与え、女将には稲荷の社を直すように諭し大阪に。
 三度目の占いに掛かった時は、苦しい時には神頼みで、水垢離を続けた処、満願の日に神奈川宿の稲荷大明神が夢に現れ、稲荷の社の修復と信心が戻った事への感謝をあらわし、「鴻池家の乾(いぬい=北西)の隅の柱の四十二本目の土中に観音像が埋もれているから、これを掘りだして崇めれば娘の病気はたちどころに治る」と教示されます。
早速掘ってみると夢の通り観音像が出てきたので鴻池家ではこれを機に米蔵を開いて大阪三郷の貧民に施しをしたので、慈善の徳で娘の病気は全快しました。
 善六さんは鴻池から金を出してもらって馬喰町に立派な旅籠屋を建て、いままでの貧乏暮らしが一躍大金持ちになりました。
もともとソロバン占いで成功したので、生活が桁違いに良くなった・・・

柳家の型では主人公は八百屋さんで、出入りの大店で女中さんに嫌がらせを受けた腹いせに、徳利を隠して、その後占いで当てた様に演じます。ほとんど同じですが、三島の宿での出来事で、困って夜中に逃げ出して仕舞います。
【演者】
この型では六代目圓生師が有名ですね。昭和天皇の御前口演もしました。
他に「占い八百屋」で小三治師が演じています。

【注目点】
日本橋馬喰町は江戸随一の宿屋街で、東海道筋からの旅人はもとより、江戸に全国から集まった「お上りさん」はほとんど、ここの旅宿にワラジを脱ぎました。
噺中の「刈豆屋吉左衛門」は馬喰町の総取り締まりで、実在の人物です。
「御神酒徳利」とは、神前に備える対になった徳利のことで、神社等では錫制で、他には伊万里や備前・丹波・瀬戸等があります。噺では圓生師は銀、小三治師は錫製です。

『能書』
圓生師がこの噺を御前口演に選んだのは、悪人が出てこない、トントン拍子に事が運んでおめでたい等の理由だったそうです。

『ネタ』
圓生師は上方からやって来た五代目馬生師から教わったそうです。だから元の型なんですね。