05c31680-s『王子の狐』
10月に入ったこともありますので「王子の狐」です。

【原話】
 1712年の「笑眉」の「初心なきつね」です。これが上方の噺家さん達によって「高倉狐」と言う噺になりました。これを初代三遊亭圓右が東京に移植し、設定や題名を東京に合うように変えたのです。
 落語の噺にはこのように西から東に移植された噺が多くあります。(逆も少しですがあります)
 もうひとつは、「百川」と同じように噺に出て来る「扇屋」の宣伝用の噺ではないか?とも言う説があります。これはこの当時宣伝効果を兼ねて噺が作られ、寄席で演じられ宣伝の役目を担ったからです。

【ストーリー】
ある男が王子稲荷に参詣した帰り道、一匹の狐が美女に化けるところを見かけます。
よく見るとお、これから人を化かそうというつもりの様です。
そこで「ここはひとつ、化かされた振りをしてやれ」と思い狐に声をかけます。
「お玉ちゃん、俺だよ、よければ、そこの店で食事でも」と声を掛けると、
「あらお兄さん、お久しぶり」と狐も合わせてきます。
そして近くの料理屋・扇屋に上がり込んだ二人、天ぷらなどを注文し、よろしくやっていると、
狐のお玉ちゃんはすっかり酔いつぶれ、すやすやと眠ってしまいます。そこで男、
土産に卵焼きまで包ませ、「勘定は女が払う」と言い残すや、狐を置いてさっさと帰ってしまいます。
しばらくして、店の者に起こされたお玉ちゃん、男が帰ってしまったと聞いて、びっくりしたあまり、
耳がピンと立ち、尻尾がにゅっと生え正体を表してしまいます。
正体露見に今度は店の者が驚いて狐を追いかけ回し、狐はほうほうの体で逃げ出します。
狐を化かした男は友人の家に行き、吹聴するが「ひどいことをしたもんだ。狐は執念深いぞ」と脅かされ、
青くなって翌日、王子まで詫びにやってくる。巣穴とおぼしきあたりで遊んでいた子狐に「昨日は悪いことをした。謝っといてくれ」と手土産を渡します。
穴の中では痛い目にあった母狐がうんうん唸っています。子狐、「今、人間がきて、謝りながらこれを置いていった」と母狐に手土産を渡します。
警戒しながら開けてみると、中身は美味そうなおはぎ。
「母ちゃん、美味しそうだよ。食べてもいいかい?」
「ああ食べるんじゃない!馬の糞かもしれない」

【演者】
 個人的に好きなのは八代目春風亭柳枝師です。他では十代目金原亭馬生師が良いですね。その他小さん師や志ん朝師等、色々な噺家さんが演じています

【注目点】
 やはり、男よりも女の子に化けた狐をどう演じられるかでしょう。なるべくなら愛嬌良く演じて欲しいです。それと最後の子狐も可愛く演じて欲しいですね。

『能書』
王子稲荷は関東の稲荷社の総元締で、格式があります。
「紋三郎稲荷」の中でも、「行く先は王子稲荷」と言っている様に大晦日には関八州の稲荷神社から狐たちが集まりまり狐火を炊いたと言われています。

『健二のネタ』
噺に出て来る王子の「扇屋」ですが、慶安元年(1648)三代家光公の時代に初代弥左衛門が農業のかたわら
掛け茶屋をしていたのが始まりで、卵焼きが名物の割烹料理屋です。
丸く、ケーキの様な形です。
今では料理屋は止めて卵焼きのみを売っています。確かデパートにも降ろしていたと思います。

この辺一帯は江戸時代、特に八代吉宗公の時に開発された地域で、この時に隅田川の桜や飛鳥山の桜等と一緒に開発されました。
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