05ee337a『紙屑屋』
 これも秋の噺とは限りませんが、そこはまあ……。
 ちなみに上方では「天下一うかれの屑より」と言います。

【原話】
林家蘭丸作と言われています。1861年の桂松光の根多帳「風流昔噺」に既に載っているそいるそうです。また圓朝全集にも「紙屑のよりこ」として載っています。

【ストーリー】
道楽のし過ぎで勘当され、出入り先の棟梁のところへ居候している若旦那。しかし、まったく働かずに遊んでばかりいるため、居候先の評判はすこぶる悪い。とうとうかみさんと口論になり、困った棟梁は若旦那にどこかへ奉公に行くことを薦めた。
「奉公に精を出せば、それが大旦那様の耳に届いて勘当が許されますから」
さて、若旦那が行かされた先は町内の紙屑屋(現在で言うところの古紙回収業)。早速いろいろとアドバイスを受け、主が出かけている間に紙の仕分けをやらされる事になった。
「エート・・・。白紙は、白紙。反古は、反古。陳皮は陳皮。エー・・・」
早速仕事をやり始めるが、道楽していた頃の癖が抜けずに大声で歌いだしてしまいなかなか捗らない。
挙句の果てには、誰かが書いたラブレターを見つけて夢中になって読み出してしまった。
一度は正気に戻って仕事を続けるが、今度は都々逸の底本を見つけて唸り出してしまう。
また正気に戻って仕事を続けるが、今度は義太夫の底本を見つけ、役者になった気分で芝居の真似事を始めてしまった。そこへ主が帰ってきて
「何をやっているんですか? まったく、貴方は人間の屑ですねぇ・・・」
そう云われて若旦那は
「屑? 今選り分けているところです」

【演者】
現役では、林家たい平師や鈴々舎馬桜師、林家正雀師も演じています

【注目点】
若旦那ものですが、「湯屋番」と同じような構図ですね。
こちらは、芸達者な噺家さんがやると面白いです。
江戸時代はリサイクル社会ですので、あらゆる物が再利用されていました。
紙等はその最たるもので、屑屋さん----古紙問屋-----漉き返し業者、と流れて行きました。
この噺はその真中の業者での出来事です。
『能書』
上方落語では『天下一浮かれの屑より』という演目で、もちろん音曲が豊富に入っています。東京で音曲が噺に入るのは限られているので、余り掛からないのもその辺に原因が有るのかも知れません。
この紙屑の山から色々な本を見つけては、一人で白日夢を見ている若旦那です。
上方のタイトルの「天下一」とは、クズの山から出てきたサイコロで遊んでいるうちにこの目が出て、「総取りや!」とせっかくより分けたクズをかき寄せる落ちが使われていたことに由来しているそうです。

『ネタ』
噺の中で、「からす」と言うのは真っ黒になった紙ですね。これは思に手習いの処で仕様された半紙等で、当時は真っ黒になるまで練習して使っていました。
「チンピ」とは陳皮の事でミカンの皮です。
「せんこうがみ」とは「線香紙」と書き、煙草の空き箱のことで「浅黄紙」とも書きます。
ここの処だけは明治期に変えられたそうです。煙草の空き箱は明治以降だからです。