214255da『棒鱈』
今日はこの噺です。

【原話】
古くからある江戸落語です。詳しいことは良く判っていません。

【ストーリー】
江戸っ子の二人連れが料理屋の隣座敷で、田舎侍が大騒ぎする声を苦々しく聞いています。
「琉球へおじゃるなら草履ははいておじゃれ」などという間抜けな歌をがなっていて、静かになったと思ったら、
芸者が来た様子で、隣の会話が筒抜けに聴こえてくるので、余計腹が立って来ます。
芸者が、「あなたのお好きなものは?」と聞くと
「おいどんの好きなのは、エボエボ坊主のそっぱ漬、赤ベロベロの醤油漬けじゃ」等と言う始末。
何の事かと思ったら、タコの三杯酢と鮪の刺し身だと言う。
「おい、聞いたかい。あの野郎の言いぐさをよ。マグロのサムスだとよ。……なに、聞こえたかってかまうもんか。あのバカッ」
と大きな声を出して仕舞います。
芸者が、侍が怒るのをなだめて、三味線を弾きますから何か聞かせてちょうだい
と言うと、侍
「モーズがクーツバシ、サーブロヒョーエ、ナーギナタ、サーセヤ、カーラカサ、タヌキノハラツヅミ、ヤッポコポンノポン」と、歌い出す始末。
あきれかえっていると、今度は「おしょうがちいが、松飾り、にがちいが、テンテコテン」とやりだします。
気の短い江戸っ子が、我慢ならなくなって、隣を覗こうと立ち上がります。
相棒が止めるのも聞かずに出かけていくと、酔っているからすべって、障子もろとも突っ込みます。
驚いたのが田舎侍。
「これはなんじゃ。人間が降ってきた」
「何ォ言ってやがるんでえ。てめえだな。さっきからパアパアいってやがんのは。酒がまずくならあ。マグーロのサスム、おしょうがちいがテンテコテンってやがら。ばかァ」
「こやつ、無礼なやつ」
「無礼ってなあ、こういうんだ」
と、いきなり武士の面体に赤ベロベロをぶっかけたから
「そこへ直れ。真っ二つにいたしてくれる」
「しゃれたたこと言いやがる。さ、斬っつくれ。
斬って赤くなかったら銭はとらねえ、西瓜野郎ってんだ。さあ、斬りゃあがれッ」と、大喧嘩。
そこへ料理人が、客のあつらえの鱈もどきができたので、薬味の胡椒を添えて上がろうとしたところへけんかの知らせ。
あわてて胡椒を持ったまま、それを振り掛けたからたまりません。
ハックション、ハックションの連続です。
さすがに静かになり、「どうなりました?」
丁度、胡椒(故障=邪魔)が入ったところ・・・

【演者】
代々小さん一門に伝わっている噺です。八代目柳枝師が特にしていました。
現役では小三治師、さん喬師を始めかなりの噺家さんが演じています。

【注目点】
「首提灯」と並んで、江戸っ子の粋(粋がり?)と啖呵が売り物の噺で、それだけに、歯切れよくタンカのきれる演者でないとサマにならず、この点を注意しなければなりません。

『能書』
まあ、江戸っ子は地方の藩の武士が江戸に出て来て努めていても「浅葱裏」と言ってバカにしていたそうです。
それにこの噺の時期はどうも幕末から明治の初めと推定されますので、薩摩出身の武士には余計反感があったのかも知れません。
その点でも「首提灯」と似ている処がありますね。

『ネタ』
「棒だら」には「よっぱらい」の意味の江戸言葉だそうで、他にも「バカ」の意味も含まれていたそうです。
尤も明治の初めには廃れていたそうです。