large『替わり目』
今回は立冬と言う事もありこの噺です。
 初冬の代表的な噺ですね。

【原話】
文化9年(1812)に江戸で刊行された笑話本「福三笑」中の小咄の
「枇杷葉湯(びわようとう)」が原話だそうです。

【ストーリー】
酔っ払った男が自分の家の前で俥に乗ったり、さんざん車夫をからかって帰って来ます。女房は早く寝かせようとしますが、寝酒を飲まなければ寝られないと言い出します。
女房は仕方なく女房は夜明かしのおでん屋へ出かけて行きます。
かみさんを買い物にやった亭主が、
「何だかんだっつっても、女房なりゃこそオレの用をしてくれるんだよ。ウン。
あれだって女は悪かねえからね……近所の人が
『お前さんとこのおかみさんは美人ですよ』って……
オレもそうだと思うよ。『出てけ、お多福っ』なんてってるけど、
陰じゃあすまない、すいませんってわびてるぐれえだからな本当に……
お、まだ行かねえのかおう……立って聞いてやがる。さあ大変だ。元を見られちゃった」

とここで下げるやりかたもありますが、続きがあります。
 亭主はその間に家の傍を通ったうどん屋をつかまえて酒の燗をつけさせ、うどん屋が何か食べてほしいというのをおどかして追っ払ってしまいます。
そのあとで新内流しをつかまえて都々逸をひかせていい気持ちになっているところへ女房が帰ってきました。
「おや、どうやってお燗をしたの」
「いまうどん屋につけさせた」
「なんか食べたの」
「なにも食わねえでけんつくを食わせた」
「かわいそうに、うどんでもとって…。うどん屋さーん」
「おいうどん屋、あそこの家でおかみさんが呼んでるぜ」
「どこです」
「あの腰障子の見える家だ」「
あそこは行かれません。いま行ったら銚子の替わり目の時分だから」

【演者】
これはね、志ん生師ですね。噺での亭主と奥さんの関係が
そのまま、志ん生師とりん夫人の関係そのままだそうです。
天衣無縫と言うか落語に全てを注いでいた志ん生師は家庭の事など
顧みなかったと言われていますが、それを支えたのがりん夫人でした。

【注目点】
上方では「銚子の代わり目」又は「鬼のうどん屋」等としてよく演じられたそうです。
夜泣きうどん屋の登場するくだりは、その頃に加えられたものと思われます

『能書』
今は一緒の人情噺として定着していますが、やはり最後の下りまで聴きたいですね。

『健二のネタ』
昭和24年の新東宝映画「銀座カンカン娘」の中で、志ん生師がこの噺を一席演じています。
映画の志ん生師は痩せていて当時の食糧事情が伺えます。