raccoon_a03『権兵衛狸』
今日は、お伽話のような落語です。

【原話】
1752年の「軽口副徳利の「狐の返報」が原話とみられています。
【ストーリー】
田舎に住む権兵衛の家には、夜な夜な若い者が集まって、いろいろな話をして帰る。
ある夜、みんなが帰ってから「権兵衛、権兵衛」と戸を叩く者がいるが、戸を開けると誰もいない。
狸の仕業だと踏んだ権兵衛が、戸を叩くタイミングに合わせて、勢いよく戸を開けると狸が転がり込んで来た。
取っ組み合いの末に狸をふん縛り、天井から吊るしておいた。翌日、訪れた村人が、狸汁にして革は襟巻きにしようと言うが、今日は父親の命日だから殺生はせず、逃がしてやるという。
ただ逃がしたのではまた悪さをするから、躾のために背中と頭の毛を刈り取った。
背中に夜風が滲みたら悪さをしちゃ行けないと思い出せ、と逃がしてやった。
夜になると「権兵衛さん、権兵衛さん」と、また狸がやってきた。今度は何のようだと尋ねると
「今夜は、髭をやっておくんなせぇ」

【演者】
九代目の鈴々舎馬風師が得意としていました。今の馬風師も演じます。それと今の文楽師も助演の時は結構演じます。短いので時間調整が楽なのでしょうね。

【注目点】
田舎の野趣もあり、獣を逃すと言う人情もあり、それでいてオチが何とも人を喰った噺で、
聴いていても後味の良い噺です。

『能書』
時間調整用には足りない場合は「のっぺらぼう」のマクラを入れる事もあり。色々と楽しめる噺です。

『ネタ』
この噺の最大の謎は、そもそも狸は何の用で権兵衛さんの所に来たのか?
恩返し? それともイタズラ?
権兵衛さんは「悪さぶちにやって来た」と言ってますが、年中こんな事があったのでしょうか? それなら、最初から捕まえそうですが……
それから、この地方では狸は狸汁にするのがデフォなんですね。
美味しいのか?狸汁。
熊は食べた事あるけど……。