aa573da95667f178e6a15289762f7f73今日は土用丑の日にちなんで「素人鰻」です。

原話は噺本『軽口大矢数』(安永2年:1773年)の『かば焼』、または『大きにお世話』(安永9年:1780年)の『蒲焼』からです。
何と言っても文楽師の名演が光ります。

元旗本の武士がしる粉屋をやろうと店を探していると「神田川の金」という、ひいきにしていた鰻さきの職人に出会います。
金さんの勧めで鰻屋を開業することにしました。いわゆる士族の商法というやつですね。
腕がいいが、酒癖の悪い金さんですが、酒を断って店を手伝うというので殿様も安心です。

さて、最初は良かったのですが、開店の日に祝いの酒だと主人の友達が金さんに飲ませたところ、だんだん悪い酒癖が出てきて暴れ出し、店を飛び出してしまいます。
翌日、職人がいなくなって困っていると、金さんは吉原から付き馬を引いて帰ってきた。
昨日のことは、何も覚えていないという。
黙って遊び代を払ってやると、今度は金さんは酒を飲まず一生懸命働きだし、腕はいいので店も順調になります。

主人はすっかり喜び、ある日閉店の後、酒を出してやるが飲まないで寝てしまう。
ところが家の酒を盗み飲みして、またもや悪口雑言の末、店を飛び出してしまう。次の日も同じで、
仏の顔も三度やらでもう帰って来ません。

困った主人は仕方なく自分で鰻をさばこうとし、捕まえにかかるが捕まらない。
糠をかけたりしてやっと一匹捕まりかかるが指の間からぬるぬると逃げて行くきます。
なおも鰻を追って行く主で、それを見て女房がどこへ行くのかと声をかけます。
「どこへ行くか分かるか。前に回って鰻に聞いてくれ」

昭和29年に芸術祭賞を受けた噺です。
ふだんは猫のようにおとなしい神田川の金が、酒が入りだんだんと酔っていき、ついには虎になり悪口雑言の大暴れをするくだりがこの噺の眼目ですね。
その豹変ぶりが物凄いですね。
この噺の元は、三遊亭円朝の「士族の商法(御膳汁粉)(素人汁粉)」だと云われています。
上方落語の「鰻屋」とは成立が違います。

この噺の職人金さんは、実在の人物で、「神田川」に居た職人で、中々腕の良い職人で、
「金が居るなら今日は鰻を食べて行こう!」
と言う客が曳きも切らずに訪れたと言うくらいの名人だった様です。
当時の食通の間では、”金”と追えば”神田川の金”だったと言う事です。
榎本滋民さんが、「素人鰻」の解説で言われていたので、本当なのでしょう。知らなかったなあ・・・・
今日は小三治師で聴いてください。


10代目柳家小三治 本名:郡山 剛蔵(こおりやま たけぞう)、1939年生まれ、
出囃子は『二上りかっこ』
1959年 - 5代目柳家小さんに入門。前座名は小たけ。
1963年- 二つ目昇進し、さん治に改名。
1969年 - 17人抜きの抜擢で真打昇進。10代目柳家小三治襲名。
2004年- 芸術選奨文部科学大臣賞受賞
2014年 重要無形文化財認定