127660082026116231561今日は文楽師で有名な「夢の酒」です。

別題は『夢の悋気』とも云うそうです。
この噺は元は人情噺「松葉屋瀬川」がその成り立ちです。
これから落とし噺「橋場の雪」が作られ、更に「隅田(すだ)の夕立」「夢の後家」の二通りに改作されました。
それの「夢の後家」を文楽師が昭和10年ごろに「夢の酒」に改作しました。

雨模様の日、ある商家の昼下がりのこと・・・・
店の奥でうたた寝をしていた若旦那を、風邪でもひくといけないと奥方が揺り起こせば、夢を見ていた様子。
「どんな夢を見ていたの?」と訊ねられた若旦那は夢の内容を語り出します。

用足しに出掛けた向島で急な雨に降り込められ、ある家を軒先で雨宿りをしていると、その家の女が中で休息なさいと声を掛けてくれる。
誘われるままに家に上がり、いつもは飲めない酒を飲み、さらにはその女といい仲に・・・ここまで聞くと奥方は嫉妬で悔し泣き。
騒がしさにやってきた大旦那も、「夢に悋気」の女心に苦笑します。
しかし、収まらないのは奥方で「淡島様に願掛けをすれば同じ夢を見られると申しますから、同じ夢を見てその女を叱ってください」と大旦那に詰め寄ります。
困った大旦那が、しぶしぶ願掛けをして昼寝すると、いつの間にか向島にやってきた様子。

夢の女の家を訪ねるとお酒を進められます。
はじめは拒んでいたが大旦那でしたが、この人は息子と違っていたって酒好き。
お燗酒を頼んだが、あいにくお湯が切れていました。
「お湯が沸くまで冷やで」と進められたが、やはりお燗の方がいい…と言ったところで、お花に揺り起こされた。
「おかしな事もあるものだ…」
「で、行けましたか?」
「行けた…が、惜しい事をしたものだ」
「惜しい? もしかして、ご意見するときに起こしてしまいましたか?」
「いいや…冷でもよかった」

夢の中を訪問するという洒落た趣の噺で、しかも季節はこの梅雨の時期です。
この時期は小雨が降ると肌寒くなるので熱燗が恋しくなりますね。
出てくる女性が皆良いですねえ。
夢の中の美女はさほどいやらしく無く、お嫁さんも可愛らしくて良いですね。

淡島様にお願いすると夢の中に導かれる。と言うのは色々調べても出てきません。
この噺しか無いのです。
淡島様と言うのは、淡島明神の事ですが、江戸では少なかったそうです。
網野宥俊氏の『浅草寺史談抄』(昭和三十七年)には「江戸の近在で、淡島神を祀ったところは、当浅草寺の他に、文京区音羽の護国寺(真言宗)と世田谷区北沢の森厳寺(浄土宗)の三ヵ所であった。」とあります。
江戸名所図会には浅草寺一箇所しか書かれていないそうで、それも東照宮が焼けた後に淡島様を勧請したそうです。

ですので、この事についてはあの世で文楽師に聞くしか無いかも知れませんね。
今日は、現役で最近評価が高まってる入船亭扇辰さんで聴いて下さい

本名:川越 辰朗、1964年2月13日 生まれ、。出囃子は、「からかさ」 新潟県長岡市出身
1989年九代目入船亭扇橋に入門、扇たつ 1993年二ツ目に昇進。扇辰と改名
2002年真打に昇進