img_942423_33093205_0今日は「しびん」です。
文楽師は花瓶」と言ってましたね。馬生師も文楽師が亡くなった後で高座に掛けました。
橘ノ圓都師等は『尿瓶の花活け』と題していました。

原話は、宝暦13年(1763年)に出版された笑話本「軽口太平楽」の一遍である「しびんの花活」です。
三代目円馬師が、大阪在住中に仕込み、東京風に直し、八代目文楽師が直伝で継承して十八番にしました。

とある道具屋にやってきた一人の侍。
店先に飾ってあった『ある物』に目を留め、「これは珍しいものだ」と主を呼びつける。
「これは珍しい花器(花瓶)である。買い求めたい」

…珍しいはずで、そいつの正体は花瓶ではなくて尿瓶。
道具屋もびっくりして、それは不浄の物だと汗だくになって説明するが、侍は一向に理解してくれない。
とうとう道具屋も面倒臭くなって、尿瓶を「世にまたとない名器」と売りつけてしまった。

屋敷に帰った侍。尿瓶を丁寧に磨き、花を活けて床の間に飾っていると、そこへ出入りの商人がやってくる。
商人が床の間に目をやって…驚いた。
「殿、それは尿瓶と申しまして、病人が下の用を足す特に使う不浄物でございます!」
騙されたと知った侍、烈火のごとく怒りだし、長い物を引っ掴むとものすごい勢いで屋敷を飛び出した。

一方こちらは道具屋。あれで良かったのかと考え込んでいると、さっきの侍が竜巻のごとき勢いで飛び込んでくる。
気づいたんだ…そう思った道具屋は、覚悟を決めると侍の前に平伏した。
「申し訳ありません。母が病でふせっておりまして、つい、出来心で…」
侍。何を思ったのかやおら刀を納めると「金はくれてやる」と言って帰ってしまった。
へなへなと屑折れる道具屋に、隣の店の親父が声をかける。

「よかったねぇ、道具屋さん。しかし…あの侍もいい人だねぇ、騙されたと知っても、金を返せって言わないんだから」

道具屋が「小便は出来ないよ。尿瓶は向こうにあるんだから…」

尿瓶と言うのは病人が小用をする時にトイレに行けない時に使うモノですね。
知らない方はいないと思いますが・・・・
サゲの、小便は「道具屋」でおなじみのネタですね。
道具屋の符牒で、注文をつけるだけ付け、結局買わずに帰る客の事または行為ですね。

この噺は文楽師の噺でも、隠れた十八番と云われ生前は東京では、師以外は演じませんでした。
音源は文楽師で聴いて下さい

8代目桂文楽明治25年・1892年11月3日 - 昭和46年・1971年12月12日)
本名並河益義1908年:落語家になる初代桂小南に入門、1917年9月:睦会で真打昇進、翁家馬之助襲名
1920年5月6日:桂文楽襲名、1971年12月12日死去。死因は肝硬変。享年79