990912-005今日は志ん生師もよくやったと言う「義眼」です。

ある男、
目の具合がどうも良くないので、医者に相談するが、ますます見えなくなるばかり。
眼科の先生もしまいには面倒くさくなり、えいとばかり悪い方の目をスッポリ抜き取り、
代わりに義眼をはめ込んでごまかしてしまった。
「あー、どうです具合は?……そりゃよかった。それから、入れた方の目は夜は必要ないンだから、取りましてね、枕元に水を置いて、浮かべときなさい。そうすりゃ長持ちするから」

当人すっかり喜んで、その夜、吉原のなじみの女郎のところへ見せびらかしに行く。
男前が上がったというので、その晩は大変なモテよう。

さて、こちらは隣部屋の客。反対に相方の女が、まるっきり来ない。
女房とけんかした腹いせの女郎買いなのに、こっちも完璧に振られ、ヤケ酒ばかり喰らい、クダを巻いている。
「なんでえ、えー、あの女郎は……長えぞオシッコが。牛の年じゃあねえのか?」
「それにしても、隣はうるさいねえ。え、『こないだと顔が変わった』ってやがる。」
「七面鳥のケツじゃあるめえし、え、そんなにツラが変わるかいッ!こんちくしょうめ!」

焼き餠とヤケ酒で喉が渇き、ついでにどんなツラの野郎か見てやろうと隣をのぞくと、
枕元に例の義眼を浮かべた水。
色男が寝ついたのを幸いに忍び込んで、酔い覚めの水千両とばかり、ぐいっとのみ干したからたまらない。
翌日からお通じはなくなるわ、熱は出るわで、どうにもしようがなくなって、医者に駆け込んだ。

「あー、奥さん、お宅のご主人のお通じがないのは、肛門の奥の方に、何か妨げてるものがありますな」
サルマタを取って、双眼鏡で肛門をのぞくなり先生、「ぎゃん」と叫んで表へ逃げだした。
男の女房が後を追いかけてきて、「先生、いったいどうなさったんです」
「いやあ驚いた。今、お宅のご主人の尻の穴をのぞいたら、向こうからも誰かにらんでた」

とまあ、いかにも落語らしい落語と言う感じですねえ。楽しい〜(^^)
楽しいナンセンスにあふれた展開、オチの秀逸さで、落とし噺としては、かなりイケてますね。

意外にも、明治の大看板で人情噺の大家・初代三遊亭円左師が得意にしていたそうです。
それを大正の爆笑王・柳家三語楼師がさらにギャグを加え、オチも「尻の穴ににらまれたのは初めてだ」
から、よりシュールな現行のものに変えました。
そして志ん生師へと伝わっのですね。

志ん生師の音源は調べたら、「講談社DVDBOOK・志ん生復活!落語大全集」第5巻に収録されていますね。

この噺は以前、柳朝師で取り上げていますので、今日は上方の枝雀師で聴いてください。
枝雀師を取り上げるのは初めてだと思います。