500m今日は楽しい噺「お見立て」です。
原話は、文化5年(1808年)に出版された笑話本・「噺の百千鳥」の一遍である『手くだの裏』だそうです。

田舎者の杢兵衛(もくべえ)大尽が登楼し、花魁の喜瀬川を呼ぼうとする。
じつは大尽、喜瀬川から「逢いたい」という手紙を貰い、やってきたのですが、喜瀬川は店の若い者に「あんな田舎者はいやだよ」などと言って逢おうとしない。
じつは、必要な金の工面をしようと、杢兵衛大尽に手紙を出したのだが、もう金の算段がついたので逢う必要は無いという。
間に入った若い者の喜助は、喜瀬川に入れ知恵されるがままに「花魁はいま体の具合が悪くてお目にかかれません」と断りを言うが、大尽は「それじゃあ見舞いにいくべえ。
部屋はどこだ」と言い出す始末。
仕方が無く「入院をしているのです」と言えば「どこの病院だ。そこへ行こう」と食い下がる。嘘はだんだんエスカレートし、ついに喜瀬川は大尽に逢えない悲しさのため、死んでしまったということに!
どこまで行っても素直な大尽は涙を流し「墓参りに行くべえ」と発案。喜助も引き下がれなくなり、大尽を山谷の適当な寺へ案内するのですが、中に入ると、墓がずらりと並んでいる。
いいかげんに一つ選んで「へえ、この墓です」。
杢兵衛お大尽、涙ながらに線香をあげ、ノロケを言いながら『南無阿弥陀仏、ナムアミダブツ』…。
「ゲホ…ゲホ…!! 線香のたきすぎだぁ!」
火事場みたいな煙を扇子で払い、ひょいと戒名を見ると…。
全く違うので慌てて別の墓に案内するが、これも違う何と子供の墓。
次々と案内するものの、違う墓ばかり、当たり前なのですが。
「いったいどれが喜瀬川の墓だ」
「へい、宜しいのをお見立て願います」

明治の始めまでは、、店の格子の前で花魁が顔見せをする『張り見世』というシステムがあったそうで、
遊びに来た客は、格子越しにその様子を眺めながら、「よろしいのをお見立てを願います」という若い衆の言葉を聴いて、その晩の女性を選んだという。
そこから来たオチです。


動画は古今亭右朝師で