はじめのブログ

落語好きの中年オヤジが書いてる落語日記

今日はね、ちゃんとやりますよ! あたしは

「四段目」という噺

arcUP2888『四段目』
きょうはこの噺です。上方では「蔵丁稚」です。

【原話】
忠臣蔵を題材にした噺ですが、元は1771年に出版された『千年草』の一遍、「忠信蔵」です。
明治期に東京に移植されました。

【ストーリー】
仕事をさぼって芝居見物に出かけていたことがばれた定吉は、蔵の中に閉じこめられます。
「昼も食べていないのでお腹が空いているので、それからにしてくださ〜い。」と、お願いしたが駄目でした。
蔵の中は真っ暗で心細く、おまけにお腹がすいてきます。
空腹を紛らわそうと、定吉は、今見てきたばかりの四段目を思い浮かべながら順々に情景を思い出しながら一人芝居をし始めました。
 あまりの空腹に「旦那〜、お腹がすいてんですよ〜、助けてくださ〜い!」、だれも返事はない。
「そうだ、芝居の事を考えていたら空腹も忘れていられる」と、蔵の中の道具を持ち出して、本格的に演じ始めた。カタギヌ、三方、刀、カエシの代わりに手ぬぐいで、所作を夢中でまね始めます。
そこへ女中のおキヨどんが、物干しから覗くと、暗がりの中で定吉が諸肌になり、キラキラするものを腹に突き立てようとしているから、びっくり仰天。
「旦那様、定どんが蔵の中で腹を切ってます!」
「なに! しまったすっかり忘れていた。さっきから腹がへった、腹がへったと言っていたけれど、それを苦にして……。おい、なにか食べ物を。あぁ、お膳でも何でもいい」。
と、旦那自らおひつを抱えて、蔵に走り、がらがらと扉を開けて、
「ご膳(御前)」
「くっ、蔵の内でか(由良之助か)」
「ははっ」
「うむ、待ちかねた」

【演者】
多くの噺家さんが演じています。個人的に好きなのは志ん朝師ですね。現役では遊雀師がいい味出しています。

【注目点】
実に愉快な噺で、好きな噺です。
 江戸っ子は芝居見物が大変好きで歌舞伎が一番人気だったそうです。
この定吉も、ご多分にもれず芝居好きで、店の仕事をさぼって、芝居小屋に足を運ぶ一人だったんですね。
 当時、一番人気だったのは『仮名手本忠臣蔵』で、中でも、塩治判官の切腹場面である四段目は、芝居通の見るものとして大変好まれていたそうです。

『能書』
東京と上方では細部が違っていますし、時代によっても噺に登場する役者の名が違って来ます。
古い音源を聴くとその辺も楽しみの一つです。
東京では、團十郎や海老蔵の名が出てきますが、上方では中村鴈治郎と片岡仁左衛門となります。

『ネタ』
四段目は、噺の中で定吉も語っていましたが、前段の高師直への刃傷で、切腹を命じられた塩冶判官が、九寸五分の短刀を腹に突き立てた時に、花道から大星由良之助が駆けつける名場面です。当時の江戸では、「忠臣蔵」を知らぬ者などないので、単に「蔵」だけで十分通用したそうです。

「締め込み」という噺

5744bf70『締め込み』
 今日はこの噺です。季節的には不明ですが、火鉢に火が入っていて湯を沸かしてる場面から寒い時期の噺ではないかと思います。

【原話】
原話は、享和2年(1802年)に出版された笑話本・「新撰勧進話」の一遍である『末しら浪』と言う話で、上方では『盗人の仲裁』の演目で5代目桂文枝師が得意にしていました。

【ストーリー】
長屋の留守宅に泥棒が入って、風呂敷を広げて着物を包み始めたところへ、亭主が仕事から戻って来たので、泥棒は台所の床下にもぐり込んで隠れた。
 風呂敷包みを発見した亭主は、女房が間男を作って逃げようとしていると思い込み、女房が湯屋から戻ると怒鳴りつけた。
女房も負けずに、商家で奉公していた私に惚れて一緒になってくれと頼んだのはお前さんだと反撃。
 亭主が怒って、湯が沸いた鉄瓶を投げ付けたが、女房が避けたので、台所に飛んで熱湯が撒き散らされた。床下に隠れていた泥棒が堪らず「あちち」と飛び出して来た。飛び出した泥棒が、二人の言い分を聞いていたが、似合いの良い夫婦だと喧嘩の仲裁を始めた。
 泥棒に言いくるめられて、良い泥棒さんのお陰で夫婦別れせずに済んだと、
酒を出して呑み始め、夜になったので寝ることにした。
戸締まりをと思ったが、泥棒が中にいるから、外側から締めておけ。

【演者】
東京では黒門町の師匠の他、志ん生師や小さん師が得意にしていました。
印象的には柳家の噺家さんで多く聴きます。先日は三三師で聴きました。
あとは文菊師がラジオでやってましたね。

【注目点】
オチが復数あるそうです。列記してみます。
1.酒をもらった泥棒が喜び、「またちょくちょく寄らせてください」と口走り、男が返答する。
2.男が相手が泥棒であることを忘れ、「ええ、また近いうちにおいでなさい」と言ってしまう。
3.男が「そうちょいちょい来られてたまるか」とまぜ返して、噺を切るやりかた。

『能書』
江戸時代、空き巣は、戸締りのしていない家に忍び入ったと言う事なので、
ただのコソ泥とされ、情状酌量され、初犯は敲(たた)き五十程度でお目こぼしでした。
大抵は噺(出来心等)の中でも触れていましたが、町内の中で始末を付けていました。

『ネタ』
明治23年にやった4代目円生師の「締込」では、武士が雨宿りに入った家でヤカンを気に入り盗み出そうとして、夫婦げんかに巻き込まれて熱湯をかけられるという筋だったそうです。この武士はかなり素行が悪い者として描かれていたそうです。
この型は江戸独自だったそうです。

「お直し」という噺

yosiwara_emap『お直し』
今日は志ん生師で有名なこの噺です。

【原話】
1807年の喜久亭壽暁のネタ帳「滑稽集」に「なおし」とありまして、これが元です。
現在のは三代目小さん師から志ん生師に伝わり、今になっています。
昭和31年度の芸術祭賞を受賞したのは、余りにも有名です。

【ストーリー】
 吉原の女郎と牛太郎が許されない関係に落ちて仕舞います。
ところが、店の旦那は二人を一緒にした上で、女郎はおばさんとして引続き働かせてくれました。
 しばらくまじめに働きましたが、やがて男が博打に手を出してしまい、借金が残りました。
 どうしようか、途方に暮れているところに、けころに空店があるが商売をしないかと誘いがあったので、カミさんが女郎になり、男が若い衆として女郎屋を始める事にしまいした。
  けころでは、線香一本が燃え尽きる時間で料金が加算されて延長するのを「お直し」というのです。
 カミさんが客に色良い返事をする度に
「直してもらいな」
「あら、お直しだよ」
 と言う調子で一人目の客をあしらった後で男でしたが、段々面白く無くなってきて
「止めた、止めた、馬鹿らしくてやってられねぇ、俺と別れてあの客と一緒になるのか」
「馬鹿だねこの人は、客あしらいに決まっているだろ。こんなに妬かれるなら止めるよ」
 止められては困ってしまうから、もう妬かねぇから、もう一度頼むよ。
そこへさっきの客が戻って来て  
「直してもらいなよ」

【演者】
やはり志ん生師なんでしょうね。息子の志ん朝師もいい味出しています。

【注目点】
都合五回「直してもらいなよ」がありますが、志ん生師が言うのには、一度目は職業的に、二回目は元気よく、三度目は少し不安になって、四回目は捨て鉢に、そして五回目は爆発的に言うのだそうです。

『能書』
ケコロというのは、江戸の各所に出没していた最下級の私娼の総称の事です。
吉原では、羅生門河岸という所に居まして、京町2丁目南側、お歯黒どぶといわれた真っ黒な溝に沿った一角でした。
表向きは、ロウソクの灯が消えるまで二百文が相場ですが、「お直し、お直しお直しィッ」と、
立て続けに二百文ずつアップさせ、結局、素っ裸にむいてしまうという正に羅生門という感じだったのですね。

『ネタ』
蹴殺(けころ)というのは、もともと吉原に限らず、江戸の各所に出没していた最下級の私娼の総称です。(蕎麦の川柳にも出て来ますね。二回で三杯食べる奴です)
 でも、吉原では、寛政(1789−1801)の頃には絶えていたそうです

「子は鎹」(子別れ 下)について考えてみた。

 昨日、浅草の昼席のトリに個人的に好きな茶楽師が出るので休日ということもあり見に行きました。
最近の浅草の昼席はかなり混んでいるので、立ち見を予想していましたが、13時過ぎに行っても空いてる席が少しあり座ることが出来ました。
 芸協としては助に、寿輔師や桂 伸治などが出るかなり力が入った番組だと思ったのですが、意外でした。まあ、座れて良かったのですがね(^^)
 桂 伸治師は「替わり目」でした。結構やるのですが、やりなれていると言うかこの人のは女将さんが良いですね。寿輔師は例のごとくお客さんをいじったのですが、逆にイジられてペースが崩れメロメロになりました。まあ、それも計算の内なんでしょうけどね。
 期待していた茶楽師は「子別れ」の下でした。「子は鎹」という奴ですね。
 師の「子別れ 下」は三回目です。トリとしては初めてですね。この人の特徴は兎に角粋に噺をすること。良い変えれば軽いのです。勿論、重いシーンはそれなりにやりますが、臭くはやりません。その塩梅が良いのです。
 で、三回目ではっきりと判ったことがあります。それは亀が母親に怒られて金槌でぶつと言った時に他の噺家なら泣くのですが、泣きません。泣きそうになりますが、泣かないのです。
 そこを物足りないと思うか、実際に二年近く母子だけで過ごして来たのですから、こんな場面では泣けないと成長したのかも知れません。
 あるいは、独楽を当てられて額に血を流した過去から見ると母親の愛情ある言葉では泣くことでは無いという事かも知れません。
 他の噺家の演出でも泣いてもすぐに泣き止むので嘘泣きかも知れませんね。最近は寄席でも臭くやる噺家が多いので返って印象に残りました。
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